施顔祥経済部長は15日、過去1年推進してきたDRAM産業の再生計画を取りやめる可能性を初めて示唆した。DRAM市況が改善して業界各社が業績を回復させる中、救済のタイミングを既に逃したことは明らかで、政府主導による業界再編構想は頓挫する可能性が高まったと受け止められている。16日付中国時報などが報じた。
DRAM再生計画の見直しは施経済部長就任当初から観測が出ていた。TIMCが台湾DRAM業界に有益な技術開発を行えるかなど疑問点は依然多い(15日=中央社)
経済部は今年7月の時点で、政府主導で設立した台湾記憶体公司(TMC=Taiwan Memory Company)を通じて、既存6社を1~2陣営に統合する構想を描いていた。なお、TMCはその後、中国語名が既に別の企業によって登記されていることが判明したため、台湾創新記憶体公司(TIMC=Taiwan Innovation Memory Company)として正式に登記されている。
15日開かれた立法院経済委員会では、頼士葆立法委員などからDRAM業界再編計画の進度や方向性について相次いで質問が出された。施経済部長は、政府によるDRAM産業再生構想だったTMCと、1企業であるTIMCは異なっていると語り、既に構想が変化を遂げていることを明らかにした。そして、「TIMCは研究開発(R&D)が中心業務であり、6社再編のプラットフォームではない。TIMCが産業再生の理念に合わない場合、推進をやめることもあり得る」と述べ、初めて計画を中止する可能性に触れた。
産業再生の理念については台湾への技術定着と説明し、台湾DRAM業界が毎年少なくとも200億台湾元(約560億円)もの技術ライセンス料を支払っている現状を課題として指摘した。
DRAM再生プラン、申請はTIMCのみ
経済部が7月に発表した、DRAM各社から再生計画の提出を受けて、審査を経て1~2社に対し最大300億元を融資する「DRAM再生プラン」は、来週21日に締め切りを迎えるが、現段階で申請を行ったのはTIMC1社にとどまっている。
施経済部長によると、TIMCは資本金110億元への増資を目指しており、経済部に対し50億元の出資を求めている。政府による出資比率も50%未満となる予定だ。
スポット価格、2.5ドルに
半導体チップのオンライン取引を仲介する集邦科技(DRAMエクスチェンジ)によると、1ギガバイト(GB)DDR2DRAMのスポット価格は16日、eTTチップで2.5米ドルへと上昇しており、DRAM各社は過去2年の「氷河期」から脱却した。こうした現状を受けて、政府のDRAM再生計画は必要性が薄れており、撤回すべきという声が業界からも出ている。
なお、施経済部長の発言を受けて、TIMCと生産提携で合意している茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)は16日、株価がストップ安となった。