行政院賦税改革委員会(賦改会)は19日、エネルギー環境税の導入を決議した。年内の閣議決定を経て、来年に立法化、2011年の実施を予定する。ガソリン価格に最終的に1リットル当たり10~16.6台湾元(約28~47円)の税額上乗せが見込まれるなど、産業界や市民生活に大きな影響を与える。このため早くも反発が広がっているが、政府は補完措置を講じることで理解を求めていく構えだ。20日付経済日報などが報じた。
朱行政院副院長は、エネルギー環境税の導入は国際社会の大勢だと必要性を強調した(19日=中央社)
エネルギー環境税では、ガソリンなど石油製品や石炭、天然ガス、原子力に課税するエネルギー税がまず導入される。税額は今後行政院が決定し、10年かけて段階的な引き上げを行う。
温室ガス税、同時実施は見送り
賦改会は二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する温室ガス税の導入も決議したが、朱立倫行政院副院長は19日「台湾と周辺諸国の競争力の差異、およびエネルギー価格の状況を見つつ推進の時期と税額を決めたい」と発言。エネルギー税との同時導入は見送る考えを示した。また、大気・水・海洋・土壌・地下水の汚染にかかわる汚染税は、今回は導入そのものが見送られることになった。
エネルギー税の導入で、ガソリン価格や電力・電気料金は大幅に値上がりすることになる。現在1リットル当たり29.5元の95無鉛ガソリン価格は、導入10年後には39.5~46.1元まで上昇するとみられる。電気料金は、財政部案に基づく試算によると、1キロワット時(KWh)0.92元上昇し、現在より35%高くなる見通しだ。
物価上昇も誘発すると予想されるため、陳盛和財政部次長は、導入後は中低所得世帯への支援や公共交通機関の利用補助、貨物税(物品税)や印紙税、娯楽税の一部取りやめなど、補完措置を講じる考えだ。
税収、当初構想から半減
賦改会がエネルギー税導入計画の研究報告作成を委託した中華経済研究院(中経院)の試算によると、温室効果ガス排出量に伴う従量税は当初構想の1トン当たり2,000元から、同750元まで引き下げられる。これに伴い、導入10年後の政府税収は4,351億元余りと、当初の構想から半減する。
蕭代基・中経院院長は、「今やらなければ必ず後悔する」とエネルギー環境税導入の必要性を強く説き、企業のコスト負担は増えるが、高品質・高価格製品への取り組みを促すことで産業構造の改善を図れるとメリットを強調した。
製造業、1千億元のコスト増
一方、産業団体、中華民国全国工業総会(工総)の陳武雄理事長は、温室ガス税導入で、製造業に見込まれるコスト増は総額1,000億元以上にも上ると批判した。内訳は、▽石油・化学、年間400億元▽鉄鋼、300億元▽プラスチック、100億元▽セメント、60億~70億元▽自動車、60億~70億元▽化学繊維、50億元▽紡織、30億元──。その上で、労働者10万人以上が影響を受け、さらに政府の補完措置が不十分ならば、工場閉鎖や海外移転が相次ぐ恐れがあると警告した。
聯合報の見積もりによると、市民が従来通りの生活を続けるとすれば、毎月の支出が1,000元以上増える。不況で家計を切り詰めて生活している中で、自動車、バイクの維持費が上がるとため息も聞かれる。
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