台塑集団(台湾プラスチックグループ)傘下のDRAM大手、南亜科技と華亜科技(イノテラ・メモリーズ)は21日、来年度の生産能力拡大に向けた投資額を、今年の約2.5倍に当たる640億台湾元(約1,800億円)に引き上げると発表した。政府による業界への資金支援計画「DRAM産業再生プラン」への申請を見送った台プラ陣営は、業界景気が好転する中、独力での台湾最大手への成長を目指す。22日付工商時報などが報じた。
来年の設備投資額は、南亜科技が190億元、イノテラが450億元。イノテラは主に、50ナノメートル製造プロセス(来年第1四半期量産開始)の生産能力拡大、および40ナノプロセスの導入を来年下半期に前倒しすることに資金を投入する。同社はこれにより台湾他社に先駆けて40ナノプロセスを導入し、生産能力で力晶半導体(PSC)を上回って台湾最大のDRAMメーカーへと成長したい考えだ。
来年DRAM需要、50%増
DRAM価格および生産ライン稼働率の上昇により第3四半期、2社の赤字額は南亜科技で前期比41%減の38億8,800万元、イノテラで同39%減の25億2,400万元と大幅に縮小した。第4四半期に黒字転換できるかとの質問に対し南亜科の白培霖副総経理は、「現在製造プロセス移行中のため生産能力の約半分しか使っておらず、単期の黒字化はまだ厳しい」との認識を示した。
しかし白副総経理は、「来年世界のDRAM供給量は40%増加する見通しだが、来年は企業における3年ごとのパソコン買い替え期に当たる上、Windows7(ウインドウズセブン)発売効果が重なり、DRAM需要は45~50%増加する」と予測。このため来年は供給不足に陥るとの見方を示し、「南亜科は大規模な設備投資を行うことで来年第1四半期にウエハー投入枚数が3万枚に増加、売上高の世界シェアも同年末には現在の5~6%から2けたへの拡大が期待できる」と楽観的な見通しを語った。
「やっていることは政府と同じ」
当初「必ず申請する」としていた「DRAM産業再生プラン」への申請を見送ったことについてイノテラの高啓全総経理は、「財務状況が苦しい中、南亜科とイノテラは海外預託証券(GDR)の発行など自力で資金を調達し、次世代技術も提携パートナーと共同開発する」と強調し、「やっていることは政府と同じだ。それならば政府の資金支援を受けないほうがいいではないか」と語った。
その上でDRAM業界の再編について、「再編するなら大規模に行う必要がある」との考えを示し、「政府主導の台湾創新記憶体(TIMC)の合併対象が茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)のみにとどまるならば意義は薄い」と否定的な認識を示した。
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