ノートパソコン受託製造大手の緯創資通(ウィストロン)は29日の董事会で、ノートPCフレーム大手2社との垂直統合や、液晶テレビの生産拡大に総額67億台湾元(約187億円)の投資を決定した。ノートPCや液晶テレビの受託製造を強化している鴻海科技集団(フォックスコン)に対抗する意図が濃厚とみられる。29日付経済日報などが報じた。
ノートPCでは中国江蘇省泰州で、金属フレーム世界最大手の可成科技(キャッチャー・テクノロジー)、およびプラスチックフレーム世界最大手の巨騰国際とそれぞれ合弁会社を立ち上げる。
可成とは投資額2,800万米ドルで金属およびプラスッチックモジュールの「緯成科技(WITプレシジョン)」を設立する。ウィストロンの出資比率は30%。巨騰とは「緯立資訊配件(WISプレシジョン)を発足させる。ウィストロンの投資額は870万米ドルで出資比率は29%。
ウィストロンは、現在のノートPC生産拠点である江蘇省昆山では今後の受注を賄え切れなくなることから、泰州に第2拠点を設置することを決めている。来年第4四半期から量産に入り、2011年で生産台数1,000万台を見込む。これにより同社の生産能力は全体で4,000万台規模に拡大する。
広東拠点に1.2億米ドル
また、液晶テレビの製造拠点である広東省中山市の緯創資通(中山)の生産能力拡大に1億2,000万米ドル、同じく液晶テレビなど生産のウィストロン・メキシコに3,100万米ドルの追加投資を行うことも決めた。
ウィストロンはソニーの液晶テレビの最大受託先だが、ソニーは今年9月、米大陸の液晶テレビの主要生産拠点であるメキシコ・ティファナ工場の鴻海への売却を発表した。両社は中国でも液晶テレビの販売提携を決めており、ウィストロンへの受注に影響が及ぶ恐れがあるとみられている。このため、追加投資は鴻海への対抗策と観測されている。
これについて林憲銘同社董事長は、「影響を受けることはない。ソニーが受託メーカー1社のみと取引することはあり得ず、新たな発注先の開拓はいずれ起きたことだ」と語った。
同社は来年の液晶テレビの生産台数を今年の2倍に当たる250万~260万台に拡大する方針で、受託製造で世界ランキング上位の冠捷科技(TPVテクノロジー)や瑞軒科技(アムトラン・テクノロジー)に追い付き、鴻海や仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)との差を広げたい考えだ。林董事長はまた、来年は新たな顧客メーカーが2社増えるとしている。
電子ブックリーダーに進出
同社はこのほか、オランダの電子ペーパーメーカー、ポリマービジョンを1,200万ユーロ(約16億円)で買収することも決めた。これは電子ブックリーダー分野への進出を意図したものと受け止められている。
ポリマービジョンは折り畳み式ディスプレイの専業メーカーで、2008年には5インチディスプレイで無線通信機能が付いた電子ブックリーダー「Readius」を生産していた。技術力はあるものの経営不振に陥り、業務を休止していた。
ウィストロンはポリマービジョンの名称を残すのか、どの事業部門に所属させるのかなどについてはコメントを行っていない。
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