中央銀行が不動産バブルの抑制に乗り出した。台北市を中心とした不動産価格の高騰は投機資金の流入が背景にあるという認識の下、台湾銀行など政府系3行の協力を得て、不動産向け融資の利率引き下げ競争に歯止めをかけて、市場への流入資金の引き締めを図る構えだ。専門家からは、台北市の高級住宅に対する融資比率の見直しや、政府所有地の売却停止など、さらに踏み込んだ措置を求める声も出ている。30日付工商時報などが報じた。
彭淮南中銀総裁は28日、住宅ローンの取り扱いが多い、台湾銀、台湾土地銀、合作金庫銀の政府系3行との会合で住宅価格高騰への懸念を示し、不動産バブル抑制への対策を求めた。これを受け3行は29日、今後は民間金融機関による住宅ローン利率引き下げ競争には加わらず、初回6カ月間の融資金利は1.5%以上を維持するなどの方針を表明した。
台湾の金融機関は1996年より、返済期間を2~3期に分けて異なる利率を適用する変動金利制を導入しており、第1期(6カ月)は金利が低く後に上昇するタイプが大部分を占めている。現在台湾銀の当初利率は1.5%から、土地銀と合作金庫銀は1.639%からとなっているが、民間銀行や外資系銀行の多くは1%前後まで引き下げている。
低金利が投機呼び込む
関係者によると、中銀は北部の住宅価格高騰問題に対して分析を行った結果、変動金利の当初利率が低過ぎることが投機的な投資を呼び込む原因になっているとの認識に達した。投機を行う投資家は、銀行から大量の資金を得て、ほとんど資金コストなしに物件を購入して住宅価格をつり上げており、この結果、一般の給与所得者が購入できなくなっている。また、当初利率の低さは、住宅ローンの利用者に償還能力の判断を誤らせたり、銀行側の融資リスクが十分反映されていないなどのデメリットもある。
こうした状況に対し、呉敦義行政院長は29日、「住宅価格が安定し、若い給与所得者やそれほど収入が高くない人でも住宅が買えることが理想」と語り、「理性的な投資と投機的な投資を明確に分ける必要がある」との認識を示した。
来年は1~2割下落も
不動産市場の専門家として知られる政治大学地政系の張金鶚教授は、現在台湾人の実質所得に増加が見られない一方で、低利率や中台経済交流などの材料によって住宅価格が高止まりしていることは合理的ではないと指摘した。さらに、銀行がこのまま投機的不動産投資への融資を続ければ、今後、利率が反発した際に不良債権が増大し、銀行は担保物件の低価格での売却を迫られバブル崩壊につながると警告した。
張教授はまた、不動産市場は来年1~2割下落し、価格が上昇し過ぎたケースでは下落幅が3割に達する物件も出現するという見通しを示した。
政策に原因
30日付経済日報は、現在の不動産価格高騰について、「低金利や優遇住宅ローンなど政策によって助長されてきた側面がある」と指摘。その上で、住宅を短期で手放す者には重税を課し、実際の住居として購入する場合は補助を行うなどの解決策を提言した。
また彭中銀総裁の対応については、不動産市場と株式市場の加熱を回避し、バブル回避には一定の効果があると評価しつつ、「市場の投資秩序にダメージをもたらす」とデメリットも指摘した。
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