緯創資通(ウィストロン)はこのほど、中国広東省中山市の中山火炬高技術産業開発区に液晶テレビの大型生産拠点を設けることで同開発区と協定を結んだ。同社はソニーの液晶テレビの最大受託先だが、鴻海科技集団(フォックスコン)との受注争奪戦が激しさを増しており、鴻海の華南での受託製造の成功モデルをそのままコピーして対抗する構えだ。3日付工商時報が報じた。
ウィストロンが設置する「液晶光電産業園区」は投資総額30億人民元(約83億4,000万円)で、初期投資額は23億元。建設面積は74ヘクタール以上で、今年12月20日に着工、2010年6月に完工の予定。液晶テレビ、液晶ディスプレイなどフロントエンド製品を生産し、川下・川上の関連メーカー30社以上が進出して、垂直統合を形成するとみられる。同園区は将来的に生産額300億人民元、労働者少なくとも3万人以上を雇用する規模までの拡大が見込まれる。
鴻海の急追で危機感
ウィストロンの大型投資について業界では、鴻海に長期にわたって対抗していくことが大きな目的とみられている。
ウィストロンは昨年よりソニー液晶テレビ最大の受託先になっており、外資系証券会社の試算によると、今年の受注台数400万台のうち、ソニーからの受注が半分を占める。
一方、鴻海は今年からソニーの液晶テレビの受注を積極化し、9月には北米市場向けの液晶テレビの主要生産拠点であるメキシコ・ティファナ工場をソニーから買収。10月末にはソニーと鴻海が中国市場での生産・販売提携を決め、来年以降、ソニーが中国で販売する液晶テレビとゲーム機はすべて鴻海が生産すると報じられた。ウィストロンにとっては、危機感を抱かざるを得ない事態だ。
ウィストロンは10月29日の董事会で、ノートパソコンフレーム最大手の可成科技(キャッチャー・テクノロジー)、および巨騰国際との合弁会社2社の設立などへの大型投資を決めている。その際も台湾メディアから、鴻海に対抗する意図に基づいた動きと報じられた。
液晶テレビ、来年500万台目標
ウィストロンの林憲銘董事長は今年の業績説明会で、来年の液晶テレビ出荷台数について今年の250万~260万台の2倍に当たる500万台以上を目指すと明言。新規顧客からの受注を獲得したことも同時に明らかにした。また、ノートPCは来年3,000万台の出荷が目標だ。
なお、中国華南に液晶テレビの大型受託製造拠点を設け、部品メーカーの垂直統合を図るモデルは、傘下の液晶パネルメーカー、群創光電(イノルックス・ディスプレイ)やフレームメーカーなどを製造拠点の付近に進出させた、鴻海の成功例をコピーしたものと工商時報は指摘している。
【表】