DRAM大手3社の10月売上高は、南亜科技の32カ月ぶり最高を筆頭に、華亜科技(イノテラ・メモリーズ)が15カ月ぶり、力晶半導体(PSC)が今年最高と、各社とも急激な好転を見せている。要因として、これまでの低迷で生産能力拡充が抑制されてきたことで供給不足となり、DRAM価格の大幅上昇につながっていることなどが指摘されている。専門家によると、この好調は来年も続くもようだ。4日付工商時報などが報じた。
「最も厳しい時は過ぎた」
台塑集団(台湾プラスチックグループ)傘下の南亜科が3日発表した10月の売上高は56億7,500万台湾元(約157億4,000万円)と、前月比24%増、前年同月比75%増の大幅な成長を見せた。同じ台プラグループのイノテラも前月比8%増、前年同月比17%増の37億6,000万元となった。2社に先立って発表された力晶の同月売上高も前月比28%増、前年比62.87%増を記録した。
業績好調は、1GB(ギガバイト)DDR2チップが供給不足に陥り、価格が経営コストを上回る2.5米ドルまで上昇していることが要因となっている。南亜科は今後も不足状態が続くとみて、今月のオファー価格をさらに10~20%引き上げる予定で、11月も引き続き増収が見込まれる。
イノテラは、今年1月の独キマンダの経営破たんにより発生した利益率の低い在庫品の消化が9月で完了しており、10月の損益状況はまだ発表していないものの、高啓全同社総経理は「最も厳しい時期は過ぎたのは確か」と語った。
生産能力抑制がプラス効果
DDR2が供給不足となっている要因について市場調査機関、アイサプライ(iSuppli)シニア顧問の呉金栄氏は、今年のパソコン市場が予想よりも落ち込まなかった一方、これまでの深刻な業績悪化を受けて、DRAM業界の今年の世界全体の設備投資額が前年比61%減と大幅に縮小し、生産能力拡充が抑制されたことを挙げた。また、景気低迷により稼働率低下が続いたことで、競争力の弱いメーカーがその他製品の生産に転換したことも影響しているという。
さらに現在、DRAMの先端製品がDDR2からDDR3に移行する一方で、PCメーカーによるDDR3導入スケジュールに遅れが生じ、DDR2の需要がかえって増加したこともDRAM業界にとって大きなプラスになっているようだ。
呉氏によると、第3四半期にDRAM需要はビット数計算で前期比14.5%増加したのに対し、供給量は同13.5%の増加にとどまり、第4四半期も17.5%の需要増が予測されるが、供給量は16.5%増にとどまる見込みだ。同氏は「この傾向は来年も続く」とみている。
川下にも恩恵
DRAM価格の上昇は川下業者にも恩恵をもたらしている。
パッケージング・テスティング(封止・検査)を力晶から受注する力成科技(パワーテック・テクノロジー)は第3四半期利益が前期比35%増、南亜科などから受注する華東科技(WALTON)は同4倍を超える業績を上げている。メモリモジュール最大手の創見資訊(トランセンド・インフォメーション)も、第3四半期に11億4,000万元の利益を計上し過去最高を更新した。
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