台湾積体電路製造(TSMC)が中国ファウンドリー最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に営業秘密を不正取得・使用され、知的財産権を侵害されたとして同社を訴えていた裁判で、米カリフォルニア州のアラメダ郡高等裁判所の陪審員団は4日、TSMC勝訴の評決を下した。TSMCはSMICに10億米ドル以上の損害賠償、および米国での販売禁止を求めており、有利な判決を望める見通しとなった。5日付工商時報などが報じた。
張忠謀董事長(左)。TSMC総執行長(CEO)に復帰して以降、今回のSMIC訴訟の勝訴評決、グローバル・ファウンドリーズ(GF)のインサイダー取引疑惑など、台湾ファウンドリーに有利な出来事が続いている(中央社)
同裁判はTSMCが2006年8月にSMICを訴えたもの。TSMCは03年にSMICを初めて知財権侵害で訴えたが、その時は05年にSMICがTSMCに1億7,500万米ドルを支払うことで和解が成立し、6年間の相互ライセンス(クロスライセンス)も結んだ。しかし、TSMCはSMICが和解の合意に違反し、TSMCの営業秘密を不正に使用し続けたとして改めて提訴していた。
陪審員団は現地時間の5日、損害賠償について審理し、来週にも結論を出す。その後、高等裁判所が米国販売の永久禁止について判決を下す。
SMIC、上告も
TSMCは4日、陪審員団の評決に歓迎の意を示すとともに、知的財産権の保護と公平な競争を望む立場を再度訴えた。TSMCの弁護士は、裁判所側はSMICが営業秘密に違反した証拠61~65件を確認していると指摘した。SMICは遺憾と失望の意を示した上で、「知的財産権の保護を重んじる立場に変わりはなく、訴訟もまだ終わっていない」と強調し、高裁判決の後、上告する可能性を示した。
史上最高の賠償額
なお、TSMCの勝訴が確定した場合、得られる賠償金は10億~30億米ドルの、ハイテク業界で過去最高規模となる可能性がある。仮に30億米ドルの場合、SMICの2.2年分の売上高に相当し、同社にとって極めて大きな打撃となる。業界ではSMICは少なくとも10年間の分割払いを行うとみている。
SMICは06年中国で、TSMCを信義誠実の原則に違反したとして逆提訴している。しかし北京地裁は今年6月、SMICの訴えを退ける判決を下し、これを不服としたSMICは最高人民法院に上告。最終判決は11月25日に下される。
ファウンドリー業界は昨年の金融危機を乗り越えて回復に向かっており、TSMCと聯華電子(UMC)が第3四半期、ともに利益を計上した一方、SMICは中国需要で設備稼働率が90%近くまで上昇したものの、同期6,900万米ドルの赤字となった。