桃園国際空港と台北を結ぶ都市交通システム(MRT)の機電システムの設計・施行を担当している丸紅は7日、建設計画が26カ月延長されたことにより損害が発生したとして交通部に対し129億台湾元(約357億円)の賠償請求を行った。交通部はこれに対し、機電システムの細部設計の進度が遅れていることを問題視し、台湾丸紅の代表者の交代などを要求して反発した。丸紅と交通部の確執が表面化したことで、2014年に予定される空港MRTの全線開通に遅れが生じる懸念が出てきた。8日付中国時報などが報じた。
空港MRTの予定ルート。桃園空港と台北を結ぶ公共交通機関は現在バスとタクシーのみで、MRTの早期開通が望まれる(交通部高鉄局提供)
交通部高速鉄路工程局(高鉄局)は台湾丸紅の代表者が交代しない場合、丸紅との機電システムの契約を解除する可能性もあるとしている。また、行政院公共工程委員会を通じて丸紅を「歓迎されざる企業」と認定し、台湾の公共工事から締め出すことも辞さないと強気の姿勢だ。
空港MRTは昨年11月、開通スケジュールの26カ月の延期が決まり、工事経費は当初より202億元増えて1,138億5,000万元となった。丸紅は2005年12月、機電システムを255億元で受注している。今回の賠償を求めた額はこの半分に当たる。
「進度に10%の遅れ」
一方、陳正楷・高鉄局副局長によると、丸紅の担当する機電システムの細部設計の進度は計画より10%の遅れが生じている。高鉄局は8月、丸紅が期日までに細部設計書を提出しなかったことを問題視し設計費の支払いを停止。その際、丸紅側は12月までの提出を約束したという。
空港MRTは台北から桃園空港を結んで中レキ(レキは土へんに歴、桃園県)に至る全長51キロメートルで、22駅を設置する。三重~中レキは13年6月に開業、14年に台北まで結ばれ全線開通となる予定だ。高鉄局は9月、空港第1ターミナルから台湾高速鉄路(高鉄)の7駅の区間で12年末に先行開業する見通しを示したばかりだが、丸紅との紛争の展開次第では建設スケジュールが順調に進むかは予断を許さない。ただ、高鉄局は「開通の目標時期に変更はなく、達成に向け努力する」という立場を強調している。
なお、台湾丸紅はワイズニュースの取材に対し、「顧客との守秘義務がありコメントできない」と回答した。
【図】