中台間の金融監督に関する覚書(MOU)が16日、金融当局間で締結された。60日以内の発効後、台湾資本の銀行による中国事務所の支店昇格申請が可能になるなど、長年閉ざされてきた中台金融市場にとって大きな節目となる。ただ、支店昇格を果たしても、外国資本の銀行に対する規定の適用を受けるため、人民元取扱業務が認められるまでには早くても2年かかる。このため台湾側は今後の両岸経済協力枠組み協議(ECFA)締結交渉で、人民元業務の即時開放など有利な条件の獲得を目指す。17日付経済日報などが報じた。
金融MOU締結は、スケジュールの遅れに政府内で批判も出ていた。陳金管会主委は16日「県市長選の12月5日を過ぎることはない」と強調していた(16日=中央社)
金融MOUとは、銀行や証券会社、保険会社が外国に支店、子会社を設立して業務を行う際の、当該国の金融当局間で取り決めた監督ルールを明文化したもの。台湾の金融業者にとっては、中国市場で外国の金融機関と同等の扱いを受けるためのいわば「入場券」だ。このため、外資以上の特別待遇を受けるためには、ECFAでの具体的な取り決めが必要となる。
MOUは16日午後6時、台北で行政院金融監督管理委員会(金管会)の陳冲主任委員が「台湾側金融監督管理機構代表陳冲」として、北京では「大陸側、銀行業監督管理機構代表劉明康、保険業監督管理機構代表呉定富、証券業監督管理機構代表尚福林」の名義で同時に署名された。内容は主に、▽情報交換▽情報守秘▽金融検査▽連絡保持▽危機対応──から成る。金管会は1月16日までに金融、保険、証券業の関連法を改正し、中台間の金融開放への準備を進める方針だ。
中国銀の台湾進出、人民元との交換条件に
台湾資本の銀行の中国事務所の支店昇格申請について、陳金管会主委は、現在中国事務所を持つ7行すべてが支店昇格の認可を受けられるとは限らず、資産規模や財務の健全性などで判断されると指摘した。
中国の現行規定では、外国資本の銀行が人民元取扱業務を認められるには、「親会社の資本金200億米ドル以上、支店開設から3年以上、2年連続で黒字達成」の条件を満たす必要がある。このため台湾の銀行は中国事務所が支店に昇格してもすぐには人民元を取り扱えず、中国に進出する台湾企業に対する現地での融資業務は依然制約を受けることになる。
このため台湾側は、ECFAのアーリーハーベスト(関税の早期引き下げ措置)で台湾の銀行による人民元取扱業務が認められることを求め、これを中国の金融機関による台湾進出の交換条件とする方針だ。
中国QDII、台湾株の投資制限を緩和
MOU締結により、中国当局が海外投資を認める適格国内機関投資家(QDII)による台湾株投資制限は、資産規模の3%から10%に拡大される。今年10月末時点で資産規模が3,700億台湾元(約1兆円)に上ったことから、投資可能な資金が従来の100億元超から、370億元程度まで増える計算となり、台湾株式市場の活性化に貢献すると期待されている。
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