5日行われた17県市の首長選挙は与党国民党が得票率、ポスト数ともに減らす結果となった。しかし馬英九政権は、現在の対中開放政策は多数の有権者の支持を得ているという認識で、政権上層部は既に、両岸経済協力枠組み協議(ECFA)を含む対中経済政策で、見直しを行わないことを確認した。対中交流の拡大によって台湾経済の強化を推進してこそ、1年後の台北市、高雄市など5直轄市首長選挙で有権者の支持を得られるとみている。7日付工商時報が報じた。
経済振興に注力
馬総統は選挙結果について、世界的な経済環境の不振、高い失業率が与党へのマイナス要因になったという見方を明らかにしており、政府は当面「経済振興、就業促進」を最大の政策目標に掲げる。
ECFAについては、12月下旬に台中市で行われる中台の窓口機関によるトップ会談(第4回江陳会)で正式交渉の開始を宣言し、来年1月からアーリーハーベスト(関税の早期引き下げ措置)の対象項目や協定条文内容について実質協議を行う予定で、政府は第1四半期中の締結を目指し、立法院の支持取り付けに全力を尽くす考えだ。
また、液晶パネルや半導体12インチウエハー工場といったハイテク産業の対中投資規制緩和について施顔祥経済部長は、年内に部会(省庁)横断会議を開き、▽核心的技術を台湾に残す▽中国で産業集積が進んでいる▽台湾に経営拠点を残す──ことを原則として各産業別に緩和方針を決定する予定だ。
中国資本による台湾投資開放についても、年内に第2段階の対象項目を決定する考えで、特に液晶パネル産業では、中国メーカーと戦略提携を結び、生産分業を図りたいとの期待が強まっている。
保険料値上げ・増税、慎重対応必要に
なお、馬政権は来年以降、全民健康保険の保険料率や営業税(消費税)の引き上げや、エネルギー環境税導入など有権者の負担増となる政策課題への取り組みが求められている。来年から再来年にかけては、直轄市長選挙、立法委員改選、総統選挙と重要な選挙が相次ぐため、慎重な対応を迫られそうだ。
特に健康保険料引き上げに関しては、楊志良・行政院衛生署長が「来年上げなければ制度自体が破綻する」と警告したが、党内からは「中小企業が依然苦しい経営状況にある中、保険料を上げれば市民の家計を無視していると受け取られかねず選挙に悪影響を及ぼす」と反対の声が上がっている。
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