米環境保護局(EPA)が二酸化炭素(CO2)など6種類の温室効果ガスを公衆衛生や環境に対する有害物質と認定したことに対し、行政院環境保護署は米国の措置に追随し、自動車・バイクの排ガスを温室効果ガス排出規制の優先対象として検討する考えを示した。一方、経済部は地球温暖化対策への取り組みは支持するとしながらも、経済発展への影響の懸念から「台湾が世界の先頭に立って厳格な措置を実施する必要はない」という慎重な立場だ。9日付聯合報などが報じた。
米国が有害物質として認定したのは、▽二酸化炭素▽メタン(CH4)▽亜酸化窒素(N2O)▽ハイドロフルオロカーボン(HFCs)▽有機フッ素化合物(PFCs)▽六フッ化硫黄(SF6)──の6種類の温暖化ガス。7日コペンハーゲンで開幕した気候変動枠組み条約第15回国際会議(COP15)に際して発表することで国際交渉の後押しを狙ったものだが、これにより米国は今後、工場や自動車などが排出する温暖化ガスへの規制が可能になる。
台湾は行政院が2006年に策定し立法院で審議中の「温室気体減量法(温室効果ガス削減法)」で、これら6種類の温暖化ガスを規制対象に定めている。米国の措置について謝燕儒・環境保護署空気品質保護騒音管制処長は8日、台湾の自動車・バイクの排ガス規制は従来より欧米の基準を参考にしていると前置きした上で、「米国が二酸化炭素の排出規制で自動車・バイクを優先対象とするのであれば、台湾も自動車・バイクの排ガス基準に盛り込むことへの参考にしたい。それにより自動車メーカーによる根本からの生産技術の調整を促し、低炭素社会の実現を早めたい」と語った。
なお、環境保護署は温室気体減量法の可決後に、鉄鋼、石油化学、セメントなど産業別に規制基準を設ける方針だ。台湾は二酸化炭素排出削減の目標について、16~20年に08年の水準に戻し、25年に00年水準、50年に00年の半分を達成することを掲げている。
「実験マウスにはならない」
一方、経済部の杜紫軍工業局長は同日、「台湾の温室効果ガス削減は世界各国と歩調を合わせるべきで、実験のマウスや優等生になる必要はない」と発言。その上で、温室効果ガス削減による産業への影響を最小限にすることを目指し、環境保護署と協議を重ねていく姿勢を示した。
温室気体減量法の立法化後の規制実施については、産業界から敏感な反応が示されている。
台湾石油化学同業公会の謝俊雄総幹事は、「台湾域内の大部分の工場は現有生産規模での生産ができなくなるばかりか、設備拡張などは全く不可能になる。政府は早めに補完措置を考案すべきだ」と強調した。
自動車業界からも、現在揮発性有機化合物の排出量1キログラム当たり12台湾元(約33円)の課税額が、将来25元へと高まる可能性があるとして、コスト増に懸念の声が上がっている。
鉄鋼最大手、中国鋼鉄(CSC)の鍾楽民副総経理は「温暖化ガス排出削減は世界と同一基準で行うべきだ」と経済部と同様の考えを示した。
なお、呉敦義行政院長は8日、馬英九総統の選挙公約でもあるエネルギー環境税の導入について、「補完措置を整えるまでは実施しない」と発言。経済への影響を見極めながら推進する考えを表明した。
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