ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は9日、太陽電池最大手、茂迪科技(モーテック・インダストリーズ)と戦略提携を結び、モーテックの第三者割当増資に応じて62億台湾元(約170億円)を出資、同社20%株式を取得すると発表した。TSMCはモーテックの筆頭株主となって太陽エネルギー産業への正式参入を果たし、モーテックはTSMCの豊富な資金力を背景に世界市場での競争力拡大を目指す。10日付経済日報などが報じた。
張忠謀TSMC董事長。モーテックには鴻海集団など多くの大手企業が出資の意向を持っていたとされるが、TSMCの決断の速さと、モーテックに同社出身の人材が多いことが提携決定の要因となったようだ(中央社)
TSMCはモーテックが新たに発行する新株を9日終値の57%に当たる1株82.7元で7,532万株取得。TSMCの持株比率は20%となる。モーテックは来年1月26日の株主総会でTSMCとの提携案の承認を取り付ける。
TSMCの蔡力行新事業総経理は、「高い将来性を備える太陽エネルギー産業で、太陽電池最大手のモーテックとの提携により同市場での展開を加速させる」と表明。ただTSMCは、今後モーテック董事会に役員2人を派遣する予定としつつ、経営に介入することはないとしている。
環境技術は今後50年の主流
半導体産業は来年、世界全体で20%成長するとの予測も出る中、張忠謀TSMC董事長は「高度成長期は既に終わり、金融危機前の状態に回復した後、年成長率は1けたで推移する」とみている。こうした中、同社は新たな分野への参入に迫られ、製造プロセスの近い太陽電池、発光ダイオード(LED)などを今後の重点産業に定めている。なお、張董事長は先ごろ代替エネルギーやグリーンテクノロジー(環境技術)は今後30~50年、ハイテク分野の主流となるとの認識を示している。
太陽電池のメジャーリーガーに
TSMCのモーテック出資発表を受けて経済日報は、「TSMCの豊富な資金は、モーテックにとって、生産能力増強、研究開発(R&D)への注力に大きな後ろ盾となり、同業との差を広げて世界シェアを拡大する」と指摘した。
9日に同紙のインタビューを受けたモーテックの左元淮董事長は同社の今後を野球に例えて、「TSMCの助力を得て世界レベルの実力を付け、『メジャーリーグ』入りを果たす」と抱負を述べた。
左董事長は「太陽エネルギー業界でTSMCはルーキー」としつつも、「ファウンドリーも太陽電池も、ともにシリコンを材料とし、しかも半導体製造の方が複雑なため、当社が技術的な協力を受ける部分も少なくないはず」と話した。
国家支援、市場の成熟が必要
このほか、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)台湾支部に加盟する太陽電池メーカーで組織する、太陽光電委員会の蔡進耀主席は、「TSMCのような大企業の参入は、台湾の太陽エネルギー産業のレベルアップに大きなプラスとなる」と歓迎姿勢を示した。
ただ、「同社が世界一になるには、同業との競争以外に、国家的支援、市場の成熟が必要」と指摘。「TSMCの支援に、台湾での全土的な太陽電池システム設置ブーム、さらに電力の高価格買い取り補助が実施されてはじめて、世界市場のライバルを打ち負かすことが可能になる」と強調した。
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