電気自動車(EV)の貨物税(物品税)5年間免除、新車購入やローン金利に対する補助金支給などを盛り込んだ「電気自動車発展プロジェクト」を経済部が推進する。今後6年で販売台数6万5,000台、生産額2,000億台湾元(約5,600億円)を目指す。一方、自社ブランドで電気自動車を開発する裕隆集団は20日、ナンバープレート取得に関する法規がないなど現状の問題点を指摘し、関係部会(省庁)の緊密な連携を求めた。21日付経済日報が報じた。
朱立倫行政院副院長は18日、杜紫軍・経済部工業局長から「電気自動車発展プロジェクト」の報告を受け、電気自動車を政府の重点新興産業に含め、推進することに同意した。近く、尹啓銘政務委員により部会横断会議が開かれて詳細が確定する見通しだ。補助金支給額は、海外諸国の事例を参考に1台当たり10万~50万台湾元(約28万~140万円)でまとまる見込みだ。
経済部の計画によると、同プロジェクトの前半3年間は、台湾全土で10カ所のモデル走行地区を選定し、各地区で300台を目標に、公営事業やタクシー、レンタリース会社など公共交通機関を対象とした電気自動車への購入補助を行う。4年目以降は助成対象を拡大し、一般消費者の電気自動車購入に対し、貨物税や自動車税減免、販売価格の割引や無利息ローンなどの提供を検討している。
経済部の関係者は、現在160万元前後の電気自動車価格が、税制優遇措置や助成金によって実際の購入にかかる費用を100万元程度まで抑えられる上、ガソリンの代わりに電気を使用することによる燃料コスト低下は特定の消費者にとって魅力になると指摘した。
「今後1年で商機が決まる」=裕隆
既に電気自動車4車種を開発した裕隆集団の厳凱泰執行長(CEO)は、「地球温暖化対策として電気自動車を開発してきたが、完成間近になって、税制に不明確な部分があり台湾で新車を登録できないと分かった」と政府に対する不満を表明した。自動車業界関係者によると、交通部は電気自動車のナンバープレート取得に関する規定を制定しておらず、財政部は国庫の枯渇を理由に補助金支給も減税も不可能としており、経済部以外の省庁は電気自動車普及に消極的な姿勢のもようだ。
裕隆汽車の陳国栄総経理は、台湾は電気自動車普及に有利な条件を備えていると指摘し、具体的には、南北わずか400キロメートルで自動車による平均移動距離が短く、ほぼ全土に電気が通っており、ガソリンスタンド(GS)の設置密度が世界でも1、2を争うほど高い点を挙げた。その上で、政府に求める「ラスト・ワンマイル」として、GSを充電スタンドに変更したり、新設する建築物の駐車場に充電スタンド設置を義務化するなど、電業法の改正を呼び掛けた。さらに、今後1年間が電気自動車産業の発展の鍵となり、これを逃せばチャンスは二度と巡ってこないと警告した。
台湾の強みである▽ハイテク産業▽モーター▽バッテリー──が生かせる電気自動車分野は、世界の自動車市場が8億台規模に上ることから、新たな「1兆元産業」、ひいては10兆元産業になり得るとの声もある。
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