19日に花蓮市沖で発生したマグニチュード(M)6.8の地震により、ほとんどの台湾液晶パネルメーカーが生産ラインの一時停止に見舞われ、パネル供給の逼迫(ひっぱく)感がさらに強まる事態となった。ディスプレイサーチの謝勤益副総裁は今後数カ月の見通しについて、「パネル価格の上昇スピード、上昇幅は予想を上回り、メーカーは恩恵を受ける」と指摘する。23日付工商時報などが報じた。
謝副総裁によると、今回の地震では中南部にある友達光電(AUO)、奇美電子(CMO)、瀚宇彩晶(ハンスター)の生産ラインで比較的影響が大きかったとみられる。地震発生直後に安全システムが作動して電力供給がストップし、ライン上のガラス基板が割れるなどの被害が出たもようだ。
1日以上の生産ロス発生か
AUOと奇美電はともに「財務上も業務上にも影響は大きくない」という見解で、AUOは「確かにラインが一時停止したが、1時間以内にすべて復旧した」と説明している。ただ、設備業者によると、生産ラインを再稼働させるにはライン上の半製品などをいったん取り除き、さらにテストを行う必要があるため1日以上の時間がかかるという。
世界シェア38~40%を占める台湾メーカーの一時生産ストップで、謝副総裁によると液晶パネルの供給量が世界全体で1~1.2%減少する影響が出た。
この事態を受けて、川下製品のブランドメーカーがパネル供給不足の深刻化を懸念し、調達量を増やして在庫の確保に努めているという。
市場の動向に敏感な韓国メーカーは値上げ姿勢を強めており、観測によると、来月の液晶モニター用パネルのオファー価格で5~7米ドル、5%前後の大幅値上げを実施する方針だ。パネル価格は韓国メーカーが主導権を握っているため、台湾メーカーもこれに追随する可能性が高い。
日本電気硝子で問題発生か
また、地震発生前から続くパネル材料のガラス基板の供給不足も、パネル不足に拍車をかけるとみられる。工商時報によると、最近、ガラス基板大手、日本電気硝子の製造工程で溶解炉のプラチナ濃度が高過ぎる問題が起き、供給量にも影響しているとの観測が出ている。同社からはハンスター、群創光電(イノルックス・ディスプレイ)のほか、その他パネルメーカーも量の多少はあるものの調達を行っており、事実とすれば一定の影響を受けるとみられる。
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