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米産牛肉阻止、米台経済関係に暗雲


ニュース 農林水産 作成日:2010年1月6日_記事番号:T00020196

米産牛肉阻止、米台経済関係に暗雲

 
 米国産牛肉の輸入問題で立法院は5日、「食品衛生改正法」を与野党一致で可決した。これにより米国産牛肉は、ひき肉や内臓など牛海綿状脳症(BSE)のリスクがあるとされる6項目について、台湾への輸入が禁止となった。米産牛肉の輸入開放に関する米台政府間合意を覆すもので、米通商代表部(USTR)は5日、批判声明を発表した。米台経済関係の当面の後退は必至で、牛肉の輸入開放を契機に貿易投資枠組み協定(TIFA)、自由貿易協定(FTA)へと関係強化を図ろうとしていた台湾にとって打撃となった。また、馬英九総統は改めてリーダーシップ不足が問われることとなった。6日付中国時報などが報じた。
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法案成立に歓声を上げる野党・民進党の立法委員ら。「消費者の健康を守る」の一点で、今回は与野党の立場が完全に一致した(5日=中央社)

 食品衛生改正法では、過去10年にBSEまたは新型ヤコブ病の症例が見られた国・地域からの、牛の頭骨や脳、目、脊髄(せきずい)、ひき肉、内臓、および関連製品の製造、加工、輸出入などを禁じた。これにより米国産の該当産品は台湾に輸入できなくなった。立法院はさらに「過去10年にBSEまたは新型ヤコブ病の症例が見られた国・地域からの肉製品の輸入は、生後30カ月未満の牛に限る」という付帯決議も行ったため、 米国産牛肉の台湾への輸入は、規制がより厳格化されることとなった。ただ立法院は、米台間の今後の貿易摩擦の高まりを見越して「規制によって国際的圧力が高まった場合、立法院の与野党議員団と行政機関は共同で解決に当たるべき」とする付帯決議も採択した。

TIFA交渉、延期に

 米国産牛肉輸入の立法化による阻止に対し、USTRは5日農務次官と連名で「米台合意への違反であり、科学的根拠を政治判断で無理に覆したもので深い失望を覚える」と批判。さらに「米国にとって今後台湾との経済・貿易関係の強化、拡大は困難になった」と警告した。

 施顔祥経済部長は5日、2月上旬に台北で再開を計画していたTIFA交渉の会議は、中止が確定したと明らかにした。経済部はTIFAを足掛かりに米台FTAの締結を目指す姿勢だったが、施経済部長は「現状からみて、TIFAもFTAも遅延は免れない」という見通しを語った。

政権の実行力、改めて問われる

 食品衛生法改正案の成立を受けて馬総統は記者会見を行い、「(米台間の摩擦を)貿易のみにとどめ、安全保障や政治面で双方が築いてきた信頼関係に影響が及ばないようにしたい」と発言。牛肉輸入をめぐってはできる限り早く米側と改めて協議を行う考えを示した。

 牛肉輸入開放の米台間合意が覆されたことについては、「消費者を責めるわけにはいかない。われわれ政府の説明が遅かった上、十分でなかったためだ」と反省を語った。

 今回の事態は馬総統をはじめとした政権幹部が立法院と十分なコミュニケーションを取っていなかったために引き起こされたもので、馬総統は「今後は重要政策や条約締結などにおいて行政部門と立法部門の協議メカニズムが必要で、牛肉問題を最後の失敗例としたい」と素直に認めた。

 昨年8月の台風8号(アジア名・モーラコット)で対応の不手際が糾弾された馬政権は、米国産牛肉の輸入開放問題でも、評価をばん回するどころか改めて実行力に疑問符が投げ掛けられる結果となった。