米アップルが27日(米国時間)発表したタブレット型パソコン「iPad(アイパッド)」は、最低499米ドルの低価格ながら、約B5サイズのカラー画面で通常のPC機能に加え、電子ブックも楽しめるなど、消費者にとって魅力あるものとなった。同市場への参入をもくろむ華碩電脳(ASUS)や微星科技(マイクロスター・インターナショナル、MSI)らは早くも戦略の見直しを迫られているもようだ。低価格ノートPC(ネットブック)や電子ブックリーダーなどの市場が侵食される可能性も指摘されている。29日付電子時報などが報じた。
iPadの台湾での発売は早くて6月になる見通しだ(アップル台湾提供)
iPadは、9.7インチ型マルチタッチディスプレイ搭載。わずか1.3センチの薄さで、重さ680~730グラム。販売価格はインターネット接続のみ可能なWi-Fiモデルで499~699米ドル。携帯電話としても使える3G通信機能をプラスした場合、130米ドルアップだ。Wi-Fiモデルが3月末に米国で、Wi-Fi+3Gモデルが4月末に米国およびその他市場で発売予定となっている。アップルは初年度販売目標を1,000万に台設定しているようだ。
iPadは当初1,000米ドル程度で販売されるとみられていたが、アップルが低価格路線に打って出たため、早ければ第2四半期にもタブレット製品を投入し、2~3割安く価格設定すれば競争できると見込んでいたASUS、MSI、聯想集団(レノボ)、ヒューレット・パッカード(HP)らは自社製品のポジショニング(位置付け)に頭を悩ませることになる。
アップルは27日、電子ブック機能を持つiPadのために、近く電子ブック配信の「iBook store」を新設し、既に出版5社と契約を結んだことも明らかにしている。既存の電子ブックリーダーは、アマゾン・ドット・コムの「Kindle(キンドル)」やソニー製品、そして先日、台湾勢として初めて市場に参入した明基電通(BenQ)の「nReader」もモノクロ画面のため、カラーの
iPadの優位性が際立つ。
これに対し、今月26日に電子ブック配信の「eBook Taiwan伊博数位書屋」も立ち上げたBenQは、「当社は中国語市場をターゲットとしており、英語圏を主に狙うiPadとは市場が異なる」とコメントした。iPadの対応言語は、英語やフランス語など欧州言語、日本語および簡体字の中国語などで、台湾や香港などで使われている繁体字の中国語には対応していない。
AUO、「パネル需要に貢献」
液晶パネル大手、友達光電(AUO)の彭双浪執行副総経理は、iPadはネットブックと価格帯が重なり、電子ブックリーダーの機能も併せ持つため、これら市場を侵食する可能性があると指摘した。ただ、同社がiPadと同種の製品向けパネル供給に向け協議中だとも明かした上、陳来助総経理が「iPadもディスプレイ応用製品の一つで、パネル需要の拡大につながる」との見方を示しており、AUOはiPad登場に商機を感じているようだ。
台湾サプライチェーンに恩恵
iPadのサプライチェーンには、数多くの台湾メーカーがかかわっており、業績への貢献が期待されている。
市場調査機関、アイサプライ(iSuppli)によると、iPadの液晶ディスプレイ部分は群創光電(イノルックス・ディスプレイ)と韓国のLGディスプレイ(LGD)が供給する。拓ボク産業研究所(ボクはつちへんに僕のつくり、TRI)のによると、▽組み立て、鴻海精密工業▽筐体(きょうたい)、鴻準精密工業(フォックスコン・テクノロジー)、可成科技(キャッチャー・テクノロジー)▽バッテリーモジュール、新普科技(シンプロ・テクノロジー)、順達科技(ダイナパック)──となっており、特に恩恵が大きいとみられるタッチパネルは、和鑫光電(シンテック・フォトロニック)と勝華科技(ウィンテック)が供給する。
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