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鴻海・郭董事長、「あと10年引退せず」


ニュース 電子 作成日:2010年2月2日_記事番号:T00020760

鴻海・郭董事長、「あと10年引退せず」

 
 EMS(電子機器受託生産サービス)世界最大手、鴻海科技集団(フォックスコン)の郭台銘董事長(60)は1日付聯合晩報のインタビューに対し、「70歳までは引退しない。あと10年は鴻海を率いる」と宣言した。郭董事長は2008年4月に第一線からの引退を表明したものの、世界金融危機の発生を受けて撤回。今回の「10年現役宣言」の理由として、▽経営経験の次世代への伝承▽激変した世界経済への対応▽台湾ハイテク産業の転換への協力──を挙げた。その上で、引退までに発光ダイオード(LED)や太陽光発電などの分野へ積極参入を図る考えを示した。
 

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 郭董事長は引退先延ばしの第一の理由に挙げた「経験の伝承」について、「私には買収・合併、国際化の経験がある。また、かつて米国に10年、日本に1年に住み、大陸(中国)に進出して以来、ほぼ半分の時間を同地で過ごしてきた」と語り、全世界に生産拠点を展開した自身の経験は他の台湾メーカーでは得難いものだと強調した。こうした経験を伝えるには時間がかかるため、現役続行を決意したという。

 第2の理由には「世界経済の急激な環境変化」を挙げた。郭董事長は、世界経済は現在、急激かつ予測不能な構造的変化を遂げていると指摘し、「私が過去35年間の経験を生かし、船長としてかじを取れば荒波を安全に乗り切れる」と自信を示した。さらに、自身が育った台湾では、現在政府がハイテク産業の再構築を目指しており、これに協力することが第3の理由だと説明した。

「ただの受託メーカーでは終わらない」
 
 EMS世界最大手としての今後の戦略についての質問には、「私はこの業界でライバルをはるかに引き離して世界一となった。アップルのiPhoneもわれわれがどう作るのかを教えたのだ」と強烈な自負心をのぞかせた。また、今後は量的な変化ではなく、質的な変化を改善を重視すると語り、「鴻海は絶対にただの受託メーカーでは終わらない」と強調した。

 「引退までの目標は?」との質問には、「LED、太陽光発電、無人工場、ロボット、オートメーションなど新分野への参入を積極的に進める」と語った。

 特に無人工場については、操業に作業員も電灯も不要で省エネ・二酸化炭素(CO2)削減につながると強調した。また、経済のグローバル化がますます急速化する中、今後は企業が中国だけに生産拠点を集中することはあり得ず、迅速に工場を移転する上でも無人工場は有利だと説明した。鴻海は、当初3億台湾元(約8億5,000万円)前後から、今後毎年約10倍以上のスピードで投資額を増やす計画とされる。

後継者問題に取り組むべき
 
 郭董事長が今回、70歳までの現役続行を表明したことに対し、証券業界からは「鴻海の株価安定に一定の好影響がある」などの反応が出ている。

 ただ一方で、「郭董事長以外の鴻海経営幹部は、一般投資家に何ら印象を与えていない。成功も失敗も郭董事長の手腕にかかっている状態は現段階ではまだ許されるかもしれないが、長期的に見れば後継者問題に早めに取り組む必要がある」と指摘する声も出ている。

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