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そごうの経営権、不透明に


ニュース 商業・サービス 作成日:2010年2月4日_記事番号:T00020818

そごうの経営権、不透明に

 
 太平洋崇光百貨(太平洋そごう)は誰が経営するのか──。百貨店業界2位で昨年22億台湾元(約62億5,000万円)の税引前利益を計上した同百貨店は3日、持ち株会社、太平洋流通投資(太流)が遠東集団(ファーイースタン・グループ)に経営権を移転した際の、出資額や役員の計6回の変更登記が経済部商業司から取消処分を受け、遠東集団による経営権の根拠が失われた。当面の経営権を手にした太流も、その正当性をめぐり前の経営者と係争中で、遠東集団も処分不当を主張して経営継続に意欲を見せる中、誰が将来経営を主導していくのか不透明な状況となっている。4日付中国時報などが報じた。
 
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大揺れに見舞われる太平洋そごう。遠東集団は「商品券が紙くずになることはない」と消費者に安心を呼び掛けた(3日=中央社)
 
 そごうをめぐる紛糾は、2002年9月の遠東集団による経営権獲得の過程に問題があったことが原点だ。

 台湾メディアの報道を総合すると、当時、太平洋そごう創業時から董事長として経営に当たっていた章民強氏(太平洋建設集団総裁)が、太平洋建設の財務危機によりそごう売却を計画し、知人の李恒隆氏に協力を要請。李恒隆氏の提案でそごうの経営形態を持ち株会社、太流による運営に変更し、董事長に就任した李恒隆氏は章氏から太流の持ち株6割の信託を受け、買収希望者との交渉に当たった。

 章民強氏は親交のあった別の人物への売却を意図していたが、李恒隆氏は遠東集団の協力の下、9月21日に台北市の自宅で1人で太流の董事会と臨時株主会を「開催」し、遠東集団からの10億台湾元(約28億4,000万円)の出資受け入れと章民強氏の董事解任を決定。これにより太流は遠東集団が出資比率99%となって経営権を獲得し、11月に出資額および役員の変更登記が行われた。経済部が取消処分を下したのはこれを含む計6回の登記で、昨年11月に台湾高等法院により太流の董事会議事録などは虚偽のものという判断が下されたことを受けてのものだ。

信託株式の返還訴訟で応戦
 
 章民強氏は、遠東集団のそごう経営権取得は不法手段による無効なものだとして03年2月以降、刑事、民事両面で訴訟闘争を展開する。今回、その後の増資も合わせて遠東集団の計40億元の出資変更登記が取り消され、太流の資本金は遠東集団が出資する前の1,000万元に戻った。これによりそごうの経営権は太流董事長の李恒隆氏に戻ったが、章民強氏は李恒隆氏に信託した太流の株式6割の返還を求め提訴しており、また、李恒隆氏が株主総会の開催など持ち株による権限行使ができないよう裁判所に仮処分を申請、受理されている。

 太平洋建設は3日、李恒隆氏は現在経営に関する重要な決定ができないとして、春節(旧正月)前に裁判所に対し太流とそごうに臨時の管理人の派遣を求める方針を明らかにした。また、そごうが出資に基づいて太流に派遣している遠東集団出身の2人の董事についても無効の仮処分を行うとしており、一歩ずつそごうの経営権を回復させたい考えとみられる。

「太平洋建設の経営権回復は不可能」
 
 これに対し李恒隆氏は3日、「太平洋建設の章ファミリーがそごうを回復することは絶対に不可能だ」と語り、その理由として太平洋建設の財力不足、および章ファミリーがそごうの法人株式48%を102億元で売却してしまっていることを挙げた。太平洋建設は現在銀行への負債が48億元あり、建設案件も小規模なものを維持する状態に経営規模が落ち込んでいる。

 今後のそごうの経営については「冷静に変化を見守る。現段階では予測し難い」と語った。利益獲得能力のあるそごうであれば、多くの出資希望者が現れ得るとの見方だ。 遠東集団の徐旭東董事長に関しては、「8年にわたってそごうをめぐる訴訟が続いており、改めて彼と協力するとなれば気分が重い」と語った。また、経済部による取消処分には「決定を尊重する」と述べた。

 一方、遠東集団は経済部の処分は不当だとして、撤回を求め行政処分を起こすと表明した。処分そのものもそごうの経営権とは無関係と主張しており、経営権を死守したい姿勢だ。

裁判の行方に注目
 
 なお、法曹界の関係者からは、そごうの経営権の行方がどうなるかは、既に公判中のものを含む刑事・民事の訴訟3件の確定を待つ必要があるとの見方が出ている。

 このうち重要なのが章民強氏による李恒隆氏に対する信託株式の返還訴訟、および02年の増資と役員改選を決定した太流株主総会の無効確認訴訟だ。信託株式の返還訴訟は2月24日に初公判が行われるが、この2件の裁判で章民強氏が勝利した場合、遠東集団はそごう経営権の喪失が決まる。