台湾銀行、台湾土地銀行、中国輸出入銀行の3行の合併による公営の大規模金融持ち株会社、「台湾金融控股公司」が3年後をめどに誕生する。張俊雄行政院長が15日発表した。合併後の資産規模は1,588億米ドル、世界の金融グループランキングで89位となるが、台湾メディアは民進党政権寄りの自由時報も含めて、一様に「規模が大きいだけで合併効果は疑問」と批判的に報じている。
16日付経済日報によると、合併は3段階で行われる。第1段階は今年の年末までをめどに、3行が株式交換による合併を申請し持ち株会社を設立。台銀は生命保険部門と証券部門を独立させて子会社を設立する。
持ち株会社が予定通り年内に設立できるかどうかは、金融持ち株会社法による諸規制をクリアできるかにかかっている。金融持ち株会社は株式売買による利ざや獲得を目的とした財務性投資(短期投資)を行ってはならず、長期投資に関しても持ち株比率を25%以上獲得することが求められている。
台銀は現在、華南金融控股、台湾人寿などに25%以上出資しているが、いずれも会計上は「財務性投資」に分類されており、現状のままでは違法状態だ。財政部は2007年政府予算案で台銀による華南金控株放出を盛り込んだが、立法院で認められなかった。財政部は行政院金融監督管理委員会(金管会)に対し、金融持ち株会社を設立した上で、一定期間内に華南金控株を処分する案を打診する方針とされる。
第2段階は08年末から09年6月にかけて、台銀が輸出入銀を合併し、輸出入保険業務を独立させて子会社とする。土地証券業務も分割し、証券子会社に編入する。第3段階は09年7月から10年末までで、台銀が土地銀を合併する。台銀の政府調達、貿易、子会社の不動産業務は、それぞれ分割して新会社設立を検討する。
スリム化を拒否
台湾金控の設立は、金融機関の統合などを目指した政府の第2次金融改革に沿ったもので、3行合併後の預金および貸し出しシェアは域内首位の18~19%、域内支店数308カ所、海外拠点16カ所となる。資産規模は世界89位、アジア16位。資本金900億元(約3,240億円)は全額政府の出資で、当面は株式の発行や上場は行わない。
いかにも公営らしいのは、3行で約1万4,000人に上る行員について、劉燈城財政部次長が「リストラは行わず、行員の権益を保障する」と語っていることだ。これまでの合併計画に対し、台銀や土地銀で行員の反対運動が吹き荒れたことを念頭に置いての方針とみられるが、「董事長や総経理の給料を上げても良い」とも語っている。劉次長によると、台銀など公営銀行の董事長の月給は16万~17万元と民間銀行の約30万の半分の水準で、総経理も公営15万に対し民間は約25万で、民間とは大きな開きがあるとしている。
低い補完性
大規模公営金融持ち株会社の誕生に、金融業界、外資アナリスト、有識者、メディアはそろって「大きいだけで競争力は疑問」と冷めた目線を送っている。
経済日報は、「リストラをせず、経営幹部の給料まで上げるのであれば、人事コストはどう節約するのか。民営化の流れに背く決定だ」と批判。3行はすべて公営の似たような企業文化を持ち、相互補完性は低く、金融市場の再編成を促すような効果は期待が持てないと論評した。
16日付自由時報は、米系証券会社アナリストの「将来の戦略目標が不明だ。株式市場の金融株が引き続き下落したことを見ても、市場の関心が薄いことが分かる」という見方を紹介した。
また、16日付聯合報は「ただ世界100位以内に入れることが目的の数字の遊び」と一刀両断。「中国輸出入銀行を合併させるのは、『中国』の名前がついた公営銀行を一行残らず消滅させる『脱中国化』が最大の狙いなのではないか」という金融業界で流れているうわさを伝えた。