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陳総統の中米訪問、米国が「空前の」冷遇


ニュース 政治 作成日:2007年8月17日_記事番号:T00002172

陳総統の中米訪問、米国が「空前の」冷遇



 陳水扁総統は21日より、任期中最後の外訪となる9日間の中米諸国訪問に出発する。米国は昨年に続いてトランジットの際の本土立ち寄りを許可せず、往復ともアラスカ・アンカレジで給油のための短時間の停泊になることが決まっている。米国の冷遇に対し「屈辱を忍んで重責を担う」と語る陳総統だが、「7年間の外交成果がそのせりふだけか」と冷ややかな批判が浴びせられている。
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陳総統は今月、訪台したシュライバー米前国務副次官補に、「台湾名義の国連加盟で住民投票をやってどこが悪いのか」と強調している(中央社)

 総統府の17日の発表によると、陳総統は今回、23日からホンジェラスで開かれる中米サミットに出席するほか、エルサルバドルとニカラグアを訪問する。

 中米の友好国訪問は、毎回トランジットで立ち寄る米国でどのような待遇を受けるかが注目され、陳総統自身も重視してきた。昨年は米国の冷遇に腹を立て、往路はアブダビ(アラブ首長国連邦)とアムステルダムで給油、復路はトリポリ(リビア)、インドネシア・バタム島立ち寄りと、逆ルートで地球を回って野党寄りのメディアから「迷航の旅」とやゆされたが、今年は冷遇を忍んでアンカレジ経由を受け入れた。

 陳総統の米国トランジットは、ブッシュ政権との関係が良好だった2001年5月は往路でニューヨークに2泊滞在、復路もヒューストンに立ち寄って共和党議員と会談を行うことができた。03年11月も往路のニューヨークで演説をしたり、メディアの取材を受けることが許されたが、同年秋以降、陳総統が米国への事前相談なしに「台湾新憲法」の制定や総統選挙での住民投票実現など、独立色の強い方針を打ち出して摩擦が増えるとともに待遇は悪化していった。そして、国家統一委員会と国家統一綱領の廃止問題をめぐる対立から、昨年はついに米国本土立ち寄りを拒否されていた。

 今年も、陳総統が国連に台湾名義による加盟を申請したことや、この問題の是非に関する住民投票を来年の総統選挙と同時に実施する方針を打ち出していることなどにより、米台関係はぎくしゃくしたままで、トランジット時の待遇改善は望むべくもなかった。

誰が見ても不合格

 これについて中国時報は陳総統のアンカレジ経由が決まった際の社説で、「今年は過去に例のない低待遇で、行くたびにワシントンとの距離が遠くなる。陳総統の外交は、歴史家の評価を待たずとも『不合格』といえるだろう」と酷評した。

 同紙は、世界保健機関(WHO)が台湾名義での加盟申請を拒否したり、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が「『台湾は中華人民共和国の一部分』という不公平な解釈」を下した例を挙げながら、「台湾の立場に同情的だった国々さえ、大国や国連の態度を見て慎重な態度に変わりつつある」と、陳政権の台湾ナショナリズムを前面に押し出した外交路線によって、国際社会からの孤立がいっそう進んでいると指摘した。

 中国の圧力が最大の問題とする意見に対しては、「台湾にとって中国の圧力は常にあるのが当然であり、その中で台湾の実質的利益を最大化する方法を考えなければならない。圧力を国民の悲壮感をあおる道具にしたり、責任逃れの言い訳にするのはもってのほか」と断じた。

米国も歩み寄りを

 なお、独立派の間には、「米国が時代にそぐわなくなった『一つの中国』政策に固執し、『台湾海峡の現状変更反対』で、台湾ばかりに対し厳しい態度を取り続けることが問題」という批判が根強くある。

 陳総統の今回の「卒業旅行」は、米台関係の冷え込んだ現状と改善の必要性を端的に示すものだ。陳総統の強硬路線で米台関係は確かに後退してしまったが、台湾主体意識がますます強まっている現状から見れば、米国側にもより柔軟な対応が求められそうだ。