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FTA推進、馬総統が陣頭指揮


ニュース その他分野 作成日:2010年4月26日_記事番号:T00022345

FTA推進、馬総統が陣頭指揮

 
 馬英九総統は25日、民進党の蔡英文主席との海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)に関する公開討論会で、「ECFAは台湾の世界戦略の一環だが、政府はリスク回避のため、他の貿易パートナーとの自由貿易協定(FTA)締結への準備を加速させる」と発言した。その上で、現在、行政院と経済部に設置されているFTA専門対策チームを「総統レベル」に格上げし、自ら招集人に就任すると表明。また、中国に対し「台湾と他国のFTA締結に圧力を加えないでほしい」と呼び掛けた。26日付経済日報などが報じた。
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討論会で各自の主張を展開する馬英九総統(左)と蔡英文・民進党主席(右)(25日=中央社)

 馬総統は討論の中で、「アジアで結ばれたFTAは2000年の3組から09年には58組まで19倍に増えた」と指摘。さらに「今後10年で17組の締結が見込まれ、33億人を含む14兆米ドルを超える超大型自由貿易地域が出現する」との見方を示し、「過去8年の民進党による『鎖国政策』で台湾は他の国や地域から取り残されており、われわれはこれ以上待てない状況にある」と強調した。

協調体制を強化

 経済部のFTA対策チームは既にシンガポール、マレーシア、米国、欧州連合(EU)、日本、タイなどを対象として研究と分析を進めており、これら国家との外交交渉や部長クラスの接触があった際には相手側にFTA締結の申し入れを行っているという。経済日報は、今後これらの国・地域を優先目標としてFTA締結を目指すと指摘している。

 なお同紙は、「省庁レベル」、「内閣レベル」「総統レベル」の対策チームがいかに分業体制を取るか、または統合するかについて、まだ詳細は検討されていないが、「総統レベル」への格上げ後は、総統府、内閣、与党の協調体制が強化され、FTA締結推進により有利との関係者の見方を示した。

「ECFAは黄金の10年を開く」

 討論会で馬総統は、ECFA締結について「(民進党政権で)失われた8年を取り戻し、黄金の10年を切り開く」と意気込みを示し、アジア経済が急速に統合に向かう中、まずECFAを締結して中国との結び付きを作らなければ、他の国・地域が台湾とFTAを結ぼうとするだろうか」と訴えた。

 また、蔡主席による「台湾の産業にダメージを与える」との懸念に対し、「あなたは台湾人が勤勉で、勇敢で、向上心を持つことを忘れている。危機をチャンスに変えられるか知っており、みんながあなたのように悲観的なわけではない」と語った上で、「台湾経済全体の利益につながらないならば、(ECFA交渉を)やめても惜しくない」と強調した。

 一方、蔡主席は、台湾の主権を維持した上で、中国に偏ることなく、世界貿易機関(WTO)の枠組みを通じて世界経済と結び付くべきだと主張。また「政府はECFAがメリットのみでデメリットはないという宣伝で市民を洗脳している」などと批判した。
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住民投票へ手続き開始

 この日討論会が行われた会場の外では、ECFA締結に反対する勢力が詰め掛け、締結の是非を問う住民投票を行うよう抗議の声を上げた。

 また23日には、民進党と台湾団結聯盟(台聯)を中心とする本土派50団体が、中央選挙委員会(中選会)に、11万人分の署名を添えて同住民投票の実施提案書を提出し、実現に向けての法的手続きを開始した。中選会の5月4日の審査を経て、その後、行政院住民投票審議委員会で住民投票法の規定に合致しているかどうかが判断され、30日以内に結果が中選会に通知される。

 台聯の黄昆輝主席は、「馬政府が住民投票を経ずにECFA締結を強行することを在野勢力は絶対に認めない」と語った。 

【表】