中国政府が加工貿易への優遇策を大幅に見直し、プラスチック原料や紡績、布、家具など1,853品目を対象に原材料の輸入時に保証金の支払いを義務付けた、商務部44号通知を23日から施行した。中国進出の台湾企業にとり重い財務負担となるため、原材料の現地調達促進や、新制度が適用されない輸出加工区などへの移転検討の動きが出ている。24日付経済日報が伝えた。
新制度では加工貿易型企業に対し、原材料輸入時にかかる税金の半分または全額を保証金として銀行口座に積み立てることを義務付けている。
施行初日の23日、上海市のある台湾系料理器具メーカーは、総経理と財務長、財務担当者一同が朝から会議を開き、今後数カ月の運営戦略について対策会議を開いた。財務長は当面の受注スケジュール表をにらみ、銀行に何度も電話して資金繰りを確認した。保証金が払えなければ、輸入品が税関を通過せず、たちまち生産ラインに影響が出るためだ。
同社では、この日の混乱を「まるで八二三砲戦だ」と語り、ちょうど49年前の8月23日に始まった、金門島を舞台にした国共両軍の一大砲撃戦になぞらえた。
「大動脈破裂」並みの衝撃
在中台湾企業で組織する「全国台湾同胞投資企業聯誼会」(台企聯)が制度の実施に先立って各地の台湾企業を対象に行った、制度によって受ける実質的な損害についてのアンケート調査によると、「人民元レートの上昇や、輸出増値税の還付率低下を『慢性出血』に例えるとすると、今回の新制度は『大動脈破裂』だ」と表現する企業もあった。
広東省珠海に展開する台湾系ロープ製造業者は、「人民元レートはここ数年で9%上昇し、業種によっては輸出増値税の還付率も従来の17%から5%に下落した。今回の加工貿易への優遇措置の撤廃で、従来型産業の台湾企業は、本社の支援が手厚い大企業以外はコストを支えきれなくなる」と指摘した。
同省東莞市に進出する台湾系家具業者も、「工場は連続して生産しなければならないが、保証金の返還には90日間かかる。その間に資金が必要になれば、支払いができなくなる」と懸念を示した。
また、同省珠海市の台湾系プラスチック業者は、「当面の策としては、生産規模を安全な範囲内に抑え、高い経営リスクを背負わないようにすることしかない」と述べ、生産規模を縮小する考えを示した。
新制度は電子やアパレルなど、加工貿易の中でも大きなウエートを占める分野には適用されないが、今回の措置の目的が中国の巨額の黒字減らしにあるため、華東地区のある台湾系電子メーカーは、「我々が次の被害者にならないと、誰が言い切れるだろうか」と不安を募らせている。
上海各紙は23日、9月1日より上海の単月最低賃金が従来の750人民元(約1万1,250円)から中国全土で最高の940元へと上昇することを伝えた。中国の投資環境悪化は、体力の弱い中小企業への影響が大きく、リスク分散の必要性がますます強く認識されそうだ。