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「民主主義の死」、ECFA住民投票提案否決に猛反発


ニュース 政治 作成日:2010年6月4日_記事番号:T00023202

「民主主義の死」、ECFA住民投票提案否決に猛反発

 
 中台間の海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)締結の是非を問う住民投票の実施を求めた、本土派政党、台湾団結聯盟(台聯)の提案が3日、行政院公民投票審議委員会(公審会)の最終審議で12対4の反対多数で否決された。これに対しECFA賛成派からは「障害が取り除かれた」と歓迎する見方が示される一方、反対派の野党陣営からは、住民投票に十分な正当性があるにもかかわらず、政府が中国の意向に沿って反民主的な判断を行ったとの強い批判が出ている。野党陣営は抗議活動を強める構えだ。4日付自由時報が報じた。
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公審会の庁舎前では、住民投票否決に対する民進党などの抗議活動が深夜まで続いた(3日=中央社)

 台聯が提案したECFA住民投票の主文は、「あなたは政府が中国とECFAを締結することに賛成しますか」だった。

 趙永茂・公審会主任委員は否決の理由について、▽台聯は政府がECFAを締結する権限を持つかを問う住民投票の実施を意図しているが、住民投票の主文はECFAの締結内容について住民投票を求めるもので、主文と理由に矛盾がある▽市民提出の住民投票は現状を変更するという立場にあるべきだが、台聯はECFAに反対の立場であるのに、賛成するかどうかを問うている。仮に住民投票が可決しても現状の変更は全くできないため、本件は重要政策に対する住民投票には当たらない──の2点を挙げた。

 ECFA住民投票については「馬英九政権による反対の立場は明確で、認められる可能性はゼロ」との観測が事前に出ていた。公審会の説明に対し、独立派のメールマガジン「台湾の声」は、「媚中馬政権が屁理屈を並べて民主主義の手続きを否定した」と批判した。

中国が強い関心

 行政院は3日深夜、尹啓銘政務委員が公審会の審議結果を尊重する声明を発表した。そして、現在世界全体で計276の自由貿易協定(FTA)が存在するが、住民投票によって決まったものは一つもないと指摘し、ECFA締結は政策に基づいた権限との立場を強調した。

 ECFA支持の立場である経済日報は4日付けで、「締結の障害が取り除かれた」という中国共産党の対台湾交渉機関の関係者の話を基に、「6月締結の目標実現が見込まれる」と好意的に伝えた。

 中国はECFA住民投票の提案の成り行きに強い関心を持ち、馬政権に対し連日「余計な問題を発生させないように」と表明していたという。

公審会廃止の住民投票も

 台聯の黄昆輝主席は「馬総統は中国のかいらいに成り下がった」と強く批判するとともに、同住民投票の再提案、および与党国民党に牛耳られている公審会を廃止するための住民投票の提案に動くと語った。

 野党は中国がECFAを機に台湾を「一つの中国市場」に縛り付け、統一への足掛かりにするとの懸念を持っており、ECFAは単なる中国とのFTAではなく、台湾の前途にかかわる政治問題を含んでいるとみている。このため民意を諮る住民投票が行われるべきとの立場で、否決されたことは「民主主義の死」であるとして、今後大規模デモを含む抗議活動の展開を計画している。