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作成日:2010年6月7日_記事番号:T00023203
児童たった1人、過疎地の退屈小学校

小学5年生の邱瑞傑君(11)は「学校がつまらない」という。理由は勉強が嫌いなわけでも、いじめられているわけでもない。クラスメートがひとりもいないからだ。屏東県獅子郷内文村の草埔国民小学内文分班に通う児童は邱君たったひとり。もちろん児童数は台湾最少だ。
交通の不便な山間部にある内文村は、先住民パイワン族が暮らす集落。ここには約100世帯が暮らしているが、若者のほとんどは村を出ており、同小学校は分校、分班へと格下げになっている。
昨年9月時点では児童が3人いたが、2人が転校してしまい、今学期は邱君ただ1人が残された。クラスメートがいないので、当然授業はいつもマンツーマン。怠けることもできず、おかげで成績はアップ。しかも成績は常に「1番」だ。逆にいえば常にビリということでもあるが...。
邱君は台湾で最も「待遇」のよい小学生でもある。児童1人に教師は5人。朝礼は「免除」、運動会などのイベントには、担任が車で15キロ離れた本校まで車で送ってくれる。給食も本校から取り寄せと至れり尽くせり。
しかし、いくら待遇がよくても、「一緒に遊べる友達がいなくて退屈」とは邱君の弁。そこで学校側は邱君が寂しい思いをしないようにと、9月から新1年生となる邱君の妹(5)が、前倒しで学校に来ることを特別に許可したほか、ネコやイヌの飼育も検討中だ。
白博仁校長によると、来年度の児童数が5人に達しない場合は、同校は廃校になるそうだ。廃校になった場合、邱君兄妹は本校まで山道を2時間歩いて通学しなければならなくなる。
へき地の農村漁村、先住民部落において小中学校は、地域の文化活動の中心的役割を担っており、廃校はその喪失を意味する。村全体の過疎化を食い止めるためにも、学校の統廃合は慎重に行われるべきだろう。