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鴻海の賃上げ、中国全土に拡大


ニュース 電子 作成日:2010年6月9日_記事番号:T00023292

鴻海の賃上げ、中国全土に拡大

 
 鴻海科技集団(フォックスコン)の郭台銘董事長は8日の株主総会で、江蘇省昆山や山東省などグループの中国全土の生産拠点で、基本給の900人民元から2,000元(約2万7,000円)への大幅引き上げを決めた傘下の富士康国際(FIH)に倣い、各地の物価水準に応じた賃上げを実施すると表明した。中国経済の成長により賃上げを避けられない課題と判断、厳しさを増す経営環境の下での競争力向上を狙った大胆な措置で、成否が注目される。9日付旺報などが報じた。
 
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郭董事長は、連続自殺で鴻海集団が問われた管理体制問題を、賃上げという社会全体の問題へと焦点を移行させた面もある。その手腕は見事と言うほかない(8日=中央社)
 
 富士康深圳工場の基本月給が2,000元となるのは10月からだが、従来水準(900元)の2.2倍となる賃上げは、大企業としてはほぼ前例がないとみられ驚きをもって受け止められている。郭董事長は「果たして合理的な判断なのか3日間徹夜で考えた」とした上で、大幅賃上げの理由について、「鴻海が労働者を搾取する企業でないことを証明するためであり、台湾企業が世界各国の企業と比べても最高水準の給与を支給できることを証明するためでもある」と初めて明確に語った。

 また、賃上げ判断の有力な根拠として、広州ホンダのストライキのニュースに接して、「中国の発展が新たな段階に入り、社会の構造的変化が起きつつある」ことに気付いた点を挙げた。「中国で製造業者、サービス業者の全面的賃上げは避けられない潮流」である以上、「破壊的イノベーション」の断行を決めたという。

 郭董事長はさらに、富士康を第一波とした賃上げの波が、想像以上のスピードと規模で広がるとの予測も示した。

 賃上げの経営への影響については、「3~9カ月に及ぶ」と語った。今年第4四半期は見通し良好なものの来年上半期はオフシーズンとなり「利益への影響は避け難い」との見解だが、「来年下半期にはカバーできる。中長期的には絶対に有利だ」と自信を示した。

労働力不足に対応
 
 証券筋からは賃上げの真の目的は競争力強化にあるとの見方が出ている。群益証券の曽炎裕副総裁は、▽労働力不足対策▽従業員の人心安定策▽同業他社にプレッシャーをかける──の「一石三鳥」を狙ったものと分析を示した。米アップルから7日発表されたばかりのスマートフォン「iPhone 4」の受託生産で、富士康は第4四半期に生産のピークを迎える。鴻海は人手不足防止のため当初より賃上げを計画していたが、連続自殺問題を収束させるため発表を早めたとみている。

 宝来証券投資顧問公司の王兆立副総経理は、「社会的イメージだけを考えての賃上げはあり得ない」と指摘した。アップルに対する受託生産価格の引き上げや、部品メーカーに対する調達価格引き下げなど、何らかのコスト削減措置によって補うとの見方だ。

サプライチェーン再編も
 
 実際、富士康の陳偉良董事長は鴻海と同日に開いた株主総会で、賃上げによるコスト増を顧客メーカーに対する受注価格の引き上げで補う方針を示し、「1~2カ月で交渉を終える」との見解を示した。 

 これについて証券会社からは、富士康が受託価格の引き上げに成功した場合、同業他社の追随、および、顧客が発注を他社に切り替えればサプライチェーンの再編が起きるとの予測が示された。

 富士康は現在ノキアを最大顧客としており、売上比率は4割に上る。モトローラ、ソニー・エリクソン、サムスン電子、LGエレクトロニクスの上位顧客5社では売上比率は9割に達する。