2008年に自社ブランド・ノートパソコン市場への本格参入を果たしたサムスン電子が短期間で急速にシェアを伸ばしていることを受け、ノートPC世界2位の宏碁(エイサー)は既に液晶パネル、DRAMといった重要部品の調達先を、サムスンから他の中立的な業者に乗り換え始めているとの観測が出ている。エイサーはコメントを控えているが、その他ブランドが追随する可能性もあり注目を集めている。21日付電子時報が報じた。
IDCの統計によると、サムスンは09年通年でノートPC564万台を出荷し、早くも3%を超える世界シェアを獲得した。今年第1四半期は172万3,000台を出荷、シェアは7位まで上昇している。
サムスンは矛盾に直面する
サムスンはDRAMで世界最大手、ノートPC用液晶パネルでは世界2位で、ノートPC製造において高度な垂直統合を実現している。自社ブランド製品は、川上から最川下の組み立てまでほぼすべて自製している。
しかし一方で、エイサーのジャンフランコ・ランチ執行長(CEO)が先ごろ、「サムスンは必ず異なる業務の間で矛盾に直面する」と発言するなど、部品供給とブランド展開との両立は困難との指摘もなされている。
ネットブックでは既にトップ争い
サムスンはブランド市場への参入当初、低価格ノートPC(ネットブック)を主力として主に欧州の通信キャリアとの提携によってブランドイメージの確立に努めるとともに、米国、中国市場へも進出した。今年に入って一般規格のノートPCにも参入しており、同社の今年通年の出荷台数は1,000万台を超える可能性もあるとの予測が出ている。
なおサムスンとエイサーは既にネットブック市場では1位、2位を争うライバル関係となっており、新たに参入した一般ノートでも製品ラインナップが重なる部分が多く、エイサーが調達先をサムスンからの他の業者に一定程度乗り換えることは必然の流れと業界関係者はみている。
この業界関係者によると、エイサーは既に、DRAMは米マイクロン・テクノロジーやその他メーカーからの調達量を増やし、液晶パネルでも友達光電(AUO)、奇美電子(チーメイ・イノルックス)への発注を増やしているという。
台湾メーカーへの恩恵は未知数
ただ、サムスンの液晶パネルとDRAMは品質、良品率、価格ともに他の業者を上回っており、エイサーの調達乗り換えは警告の意味合いが大きく、今後も相当程度の発注量を維持するとの見方もある。他ブランドが追随するかどうかも未知数で、台湾の液晶パネルメーカーやDRAMメーカーにどの程度の恩恵がもたらされるかは、なお観察が必要だ。
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