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ECFA調印、中台の経済交流新時代に


ニュース その他分野 作成日:2010年6月30日_記事番号:T00023705

ECFA調印、中台の経済交流新時代に

 
 中台間で初の包括的経済連携協定、海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)が29日調印された。中台合わせて806品目のアーリーハーベスト(関税の早期引き下げ)など4項目で合意に達し、2011年1月1日にも発効。経済交流を段階的に進めてきた中台は「全面的通商時代」を迎える。台湾側にはECFAを通じて中国市場での優先的な地位の確保とともに、貿易・投資の拡大による中国の成長力のさらなる取り込みへの期待も大きい。30日付経済日報などが報じた。
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調印式での江丙坤・海基会董事長(左)と陳雲林・海協会会長(右)。ECFAは馬英九政権が進めてきた中台交流政策においても大きな節目となった(29日=中央社)

 ECFAは29日、中国重慶市で開催された第5回民間トップ会談(江陳会)で、台湾側の江丙坤・海峡交流基金会(海基会)董事長と中国側の陳雲林・海峡両岸関係協会(海協会)会長によって調印された。アーリーハーベストのほか、▽貿易紛争を解決するための両岸経済合作委員会設置▽アーリーハーベスト対象品目の原産地を定めるための原産地規則▽経済貿易機関による事務所の相互設置推進──で合意した。このほか、特許や商標、著作権などの保護と交流、協力を強化するための知的財産権保護協議も調印された。

 なお、ECFA発効日から6カ月以内に、物品・サービス貿易、投資、紛争解決の実務4項目についての交渉が行われる。

 呉敦義行政院長は29日、ECFAと知的財産権保護協議について、7月1日の閣議決定を経て、7月初旬に立法院の臨時会で審議、遅くとも8月中旬か下旬の臨時会での可決を望むとした上で、関税や特許関連の改正案についても年内可決を希望すると語った。
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295億元の税負担減

 ECFAの柱となるアーリーハーベスト対象品目は、▽石油化学▽機械▽紡織▽交通具──を中心に、対中輸出する台湾製品が539品目、中国側は267品目で、発効日から2年3段階で関税率が引き下げられる。

 財政部が29日提出した関税に関する規則改正案によると、中国で現行の関税5%以下の台湾製品のうち72品目が来年1月にもゼロ関税となり、初年度は141億5,000万台湾元(約390億円)の関税コスト減が見込まれる。一方、台湾の中国製品に対する関税は現在2.5%以下の67品目が同時期にゼロ関税となり、19億元のコスト減となる。2年後に全品目がゼロ関税になった時点で、台湾側は年間295億元、中国側は34億元の負担がなくなる計算だ。

 台湾製品は中国の関税引き下げで、日韓より強い競争力を持つとの指摘が専門家から相次いでいる。ただ、中国商務部の姜増偉副部長(次官)は29日、中国は来年にも日韓との自由貿易協定(FTA)の協議を開始し、12年までに日中韓FTAに関する共同研究を終えたいと発言している。共同研究、協議を経て正式交渉、署名に進むことを考えると中国市場での台湾の優位性は一時的なもので、さらなる付加価値向上が必須だ。
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FTA交渉、まずシンガポール・タイと

 台湾はECFAを諸外国・地域とのFTA締結の足掛かりとすることも期待している。経済日報によると、政府はまず、シンガポール、マレーシア、タイをFTA交渉相手に定め、12年末までに締結に持ち込みたい考えだ。日米、欧州、フィリピンなどとの締結も視野に入れているが、特に米国は難易度が高いと政府関係者はみている。台湾のFTA締結相手は現在、中米の5カ国のみだ。

 台湾のFTA締結推進には中国の意向も関係してくるが、中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)の王毅主任は29日、「感情的にも論理的にも適切な対応をとる」と、初めて公開の場で考えを表明した。中国と国交を持つ国が「一つの中国」政策を認めているという客観的事実の下で、台湾が経済発展の必要性から他国・地域と経済協議の締結を求めることは理解できると語り、中台関係の平和的発展と交流、信頼関係の構築が続くのなら、解決策は見つけ出せると強調した。

年内にも第6回トップ会談

 江丙坤・海基会董事長は、次回の民間トップ会談で、両岸医薬衛生合作協議(中台医薬衛生協力協定)と投資保障協議を議題とすることを中台双方で確認したと語った。実施は年内の予定だ。

 両岸医薬衛生合作協議は、主に新薬の認証について話し合われると予想されていたが、健康食品が中心となるとの観測が出ている。このほか、バイオ新薬、漢方薬、医療器材、化粧品などが含まれる見通しだ。

 一方、租税協議は課税権などで合意に達しておらず、議題に含まれない見通しだ。

民進党、主権矮小化に懸念表明

 ECFAには経済界の期待が高い一方、中国の統一戦略に利用されるという警戒感も根強くあるが、台湾政府は賛否を問う住民投票を圧殺するなど、調印を強行した面は否めない。野党民進党は、今回のECFA調印日が7年前に中国政府が香港との間で経済貿易緊密化協定(CEPA)を結んだのと同じ日だと指摘した上で、台湾も今後、香港・マカオのように主権が矮小(わいしょう)化されると強い懸念を表明した。

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