米インテルが6月25日、高速無線通信規格WiMAX(ワイマックス)事業の推進室に当たる「WiMAX Program Office(WPO)」の解散を社内で通知した。同社は今後もWiMAX製品の開発を続けると表明しているものの、台湾業界にはインテルがWiMAX事業から撤退するのではないかとの観測が根強くある。ただ、1日付電子時報は、撤退しても実際の影響は意外に大きくないと指摘している。
インテルはWPOのうち、モバイル技術部門を「Mobile Wireless Group(MWG)」に、プラットフォーム部門を「PC Client Group(PCCG)」に、世界各地の関連マーケティング・営業部門を「Sales and Marketing(SMG)」に編入する。
インテルがWiMAX事業を縮小、
または撤退するのではないかとの見方が出る中、同社広報は30日、「今後も業界とともにWiMAX関連製品の開発に努め、新製品を展開していく。Wi-FiとWiMAXは依然重要な通信製品であり、最良の無線ブロードバンド技術だ」と表明し撤退説を打ち消した。
5億ドル投資、空手形か
ただ、台湾業界では1~2年ほど前からインテル撤退説が流れていた。インテルのWiMAX事業の展開に積極性が見て取れなかったためで、あるメーカーはWPO解散にも「意外ではない」と語っている。
インテルは2005年、台湾のWiMAX環境整備に協力する覚書(MOU)を経済部と結んだが、台湾メーカーとの実質的な技術協力はほとんど進まなかった。このため08年4月、台湾業界の実力者と政府の呼び掛けによって改めてMOUを結び直し、インテルは5年内に5億米ドル規模の調達を行うと表明した。
しかし当時から2年が経過した今、同調達計画が宣言通りに推進されているかは疑わしいとみられている。この間、インテルは威邁思電信(VMAXテレコム)に対する総額4億台湾元(約11億円)以下の投資計画を発表した以外は、大型投資を行っていない。
同社は政府に対し、WiMAXシステムインテグレーション(SI)事業体設立に出資することも約束していたが、傘下ベンチャーキャピタルを通じて行った投資額は100万~200万米ドル程度とみられており、期待外れの感がある。SI事業体設立にはインテルによる数百万米ドルの出資が必須で、成否はインテルの誠意にかかっているとされる。
企業育成の重要度は低下
インテルがWiMAXからの撤退を選択する場合の影響について電子時報は、同社の知名度、資金、技術がWiMAX産業に貢献してきたことは事実で、3年前に撤退していたら現在の発展はなかったと指摘。しかし、インテルが注力してきたのはマーケティングと企業育成であり、世界全体でWiMAX事業免許発給が数百件に上り、実際のサービスも始まっている現在、企業育成の重要度は低下しており、今撤退しても実質的影響は想像するほどは大きくないとした。
ある台湾メーカーも、WiMAXへの投資を通じて積み上げた技術は今後の4G投資にプラス効果を生み、無駄にはならないと話している。
台湾製品シェア、80%以上に
台湾では現在、インテルと密接な協力関係にある正文科技(ジェムテック・テクノロジー)を含め、聯発科技(メディアテック)、宏達国際電子(HTC)、宏碁(エイサー)、華碩電脳(ASUS)、合勤科技(ザイセル・コミュニケーションズ)などがWiMAX関連事業に進出している。
台湾のWiMAX産業の生産額は昨年が87億9,000万元で、今年は174億元への成長が予想されている。世界市場に出回る末端機器の80~90%は台湾メーカーが製造している。
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