通信キャリア最大手、中華電信の呂学錦董事長は1日、「4G(第4世代)」と呼ばれる次世代移動通信技術では「LTE(Long Term Evolution)」規格を推進する考えを明言した。同社はこれまで、次世代規格計画を政府の推進する「WiMAX(ワイマックス)」との両輪体制で進めてきたが、張暁東同社総経理も「WiMAXへのさらなる投資計画はない」と発言しており、LTEを選択する姿勢を明確にした形だ。2日付工商時報が報じた。
中華電信研究所は1日、エリクソンと共同で構築したLTE試験ネットワークでの実測結果を発表した。エリクソンの基地局が採用された試験ネットワークでのテストには、宏達国際電子(HTC)、合勤科技(ザイセル・コミュニケーションズ)、智邦科技(アクトン・テクノロジー)の3社が、スマートフォン、加入者宅内機器(CPE)といった機器を提供した。
台湾でのサービス、早くて7年後
テストの結果、LTE技術の低遅延、高速転送といった優位性が、高品質なモバイルブロードバンドを求める消費者の需要を十分に満たせることが実際の環境下で証明された。
これを受けて中華電信研究所の涂元光所長は、「LTEが3GやWiMAXよりも優れていることが証明された。当社は今後、政府による事業ライセンス発給の進行状況に応じて、商用化計画を積極的に進める」と語った。ただ涂所長は、台湾でのLTEサービス開始時期を「早くても2017年」と指摘した上で、それまで台湾メーカーは世界市場での受注獲得を目指すことになると見通しを語った。
中華電信によると、LTE対応の末端機器では、HTCが既にLTEスマートフォンの開発に着手しているほか、ネットワークカード市場にも参入を予定している。このほかザイセルがゲートウェイの開発を完了、アクトン傘下の?程科技(アクトン・ワイヤレス・ブロードバンド、AWB)もドングルに参入する。
エリクソン、台湾業者支援へ
エリクソンによると、現在世界33カ国約80社の通信キャリアがLTE事業を推進し、このうち6~7社が商用化を果たしているが、これが年内に22社、来年には45社に増えると予測される。また台湾エリクソンの曽詩淵総経理は、「当社は台湾に設置している3G、3.5G相互接続性テスト(IOT)センターをLTE用に切り替えることを決定している」と語り、今後台湾メーカーが生産し、テストを終えたLTE機器を世界の大手通信キャリアに推薦して、受注獲得を支援すると表明した。
3大キャリア、LTE優勢に
なお台湾3大通信キャリアのうち、遠伝電信(ファーイーストーン・テレコム)はWiMAXの推進に最も力を入れており、台中市でサービスを開始している。一方、台湾大哥大(タイワン・モバイル)は、WiMAXは4Gの主流規格とはならないとの姿勢を一貫して示している。
これに対し中華電信は、WiMAX事業者、全球一動(グローバル・モバイル)に出資しており、これまで政府の政策に応じてWiMAXを支持しつつ、世界的な趨勢(すうせい)を見守るといった立場を取ってきた。しかし、張総経理は「これから進むWiMAX事業者の合併・統合には関与しない」と発言しており、今後LTEに軸足を置く姿勢を鮮明にしている。
【表】