スマートフォン最大手、宏達国際電子(HTC)が世界市場でのアップル超えを目標に攻勢をかける。第一段階として今年末から来年初頭にかけて台湾市場でノキアをも抜いて首位に立つことを目指し、その後台湾での成功モデルを他のアジア市場に移植してシェアを拡大していく方針だ。通話プランとのセットでスマートフォンを販売する、携帯電話キャリア各社との提携戦略の在り方が成否を握りそうだ。9日付電子時報などが報じた。
市場調査機関IDCによると、今年第1四半期の世界スマートフォン市場でのシェア1位はノキアの39.3%で、次いで▽リサーチ・イン・モーション(RIM)、19.4%▽アップル、16.1%▽HTC、4.8%──だった。HTCはアップルに10ポイント以上の差を付けられたが、第2四半期は出荷台数が550万台と、事前予測の450万台を2割以上上回る好調だったと観測されており、下半期も引き続き伸びが見込まれる。通年の目標荷台数は2,400万台で、達成できれば世界シェアは10%台に乗る可能性が高く、通年約4,000万台が予想されるアップルとの差は6ポイントまで迫る見通しだ。
月額料金、「販拡ライン」に設定
董俊良同社アジア太平洋地区副総経理は8日、アップル超えを目指す上で、まず台湾市場で首位になることを最初の目標に挙げた。
HTCと中華電信は8日、HTC「Desire」を0台湾元で利用できる通信プランの最低月額基本料金を従来の1,479元から1,349元(約3,700円)へと引き下げた。米ドル換算で約42米ドルで、董副総経理によると、アジア太平洋地域の多くの市場で、ハイエンドスマートフォンは月額料金が40~45米ドルとなると販売台数が一挙に拡大するという。台湾市場ではこの月額基本料金、および下半期に発売する新製品によって今年末から来年初頭にかけてシェア首位を狙う。
なお、台湾スマートフォン市場では現在シェア首位はノキアの約40%で、董副総経理は詳しい数字は明らかにしなかったものの、2位はアップル、それをHTCが僅差で追っている状況だという。
アップル、高コストに忌避感
スマートフォン業界の関係者によると、アップルは強いブランド力を持つものの、携帯電話キャリアが提携販売を行う場合、大量の販売を約束しなければならない上、販売奨励金も高額、大規模な販促活動も必要で、一定の売上高を上げられるとはいえ、少なくない投資が必要となる。さらに同社のiPhoneは使用帯域幅が広いこともあり、全世界の携帯キャリアがアップル以外の選択肢はないか思案しているという。このため、HTCがより低いコストで同等の売上高を提供できれば、携帯キャリアにとって明らかに魅力となると業者は指摘している。
HTCもまた、アップル製品は選択の幅がほとんどない上、製品周期が長いことが弱みとみている。HTCは既にブランド力を持つ上、ハイエンドからミドルエンドまで製品ラインが整っており、新製品は3~6カ月ごとに投入している。このため、提携携帯キャリアごとに2~3機種を重点的にユーザーにアピールする戦略を取れば、販売台数でアップルを上回ることは可能とみている。
単一プラットフォーム、単一製品のiPhoneに対し、HTCはアンドロイドなどの複数プラットフォーム、多機種で挑む形だが、HTCがさらにブランド力を高め、また通信キャリアの調達戦略に変化が起きた場合、どちらに軍配が上げるのかは予断を許さない。
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