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EU向け液晶モニター、関税撤廃でパネル業界に恩恵


ニュース 電子 作成日:2010年7月12日_記事番号:T00023942

EU向け液晶モニター、関税撤廃でパネル業界に恩恵

 
 パソコン用液晶モニター、テレビ用セットトップボックス(STB)、デジタル複合機の3品目に対し欧州連合(EU)が6~14%の輸入関税を課していることに対し、日本、台湾、米国が世界貿易機関(WTO)の「情報技術製品に関する協定(ITA)」違反だと主張している通商紛争で、WTO紛争処理小委員会(パネル)は23日にも原告勝訴の最終報告を発表する。これに関し12日付経済日報は、液晶モニターの関税が撤廃されれば、台湾の関連業者は合計196億台湾元(約542億円)のコストを削減でき、特に液晶パネルメーカーが恩恵を受けると指摘した。
 
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 同紛争についてはWTOパネルが先月中旬、日台米の主張を認める中間報告をまとめ、当事国・地域に示したと報じられた。

 EUはこれまで、「DVI端子の付いた19インチ以上の液晶モニター」については、テレビとして利用できることから「IT製品」ではなく「家電製品」であるとして14%の関税を課してきた。

 このため液晶パネル大手、友達光電(AUO)は、チェコやスロバキアに後工程モジュール(LCM)工場を設置して関税対策を講じてきたが、現地の高い人件費にも直面していた。AUOの陳?彬副董事長は、「勝訴すればメリットは大きい」と語り、「今後、世界的な生産ライン配置計画と製品の各市場への分配がより柔軟に行える」と好感を示した。

 一方、奇美電子(チーメイ・イノルックス)広報部も、「これまでは課税を避けるためDVI端子を取り外して輸出を行っており、非常に不便を感じていた。この問題が解決できれば欧州向け輸出にとって大きなプラス」としている。

長期的には奇美電に最大の恩恵
 
 経済日報では液晶モニターの14%関税撤廃によるコスト削減を196億元と試算しているが、証券会社の見通しによると効果はさらに大きく、AUOと旧・奇美電の2009年度売上高、合計6,496億元のうち欧州向けが3割を占めるとすれば、関税撤廃により年間約300億元が削減できるとしている。

 また証券会社は、液晶パネルメーカーのうち、短期的には欧州向けの比重が大きいAUOの受ける恩恵が最大と指摘した。しかし長期的にみた場合、現在中国市場での販売に重点を置く奇美電が、今後欧州市場開拓を進めるとみられ、中国での生産規模で優位に立つ鴻海科技集団(フォックスコン)のバックアップを生かせるため、最も大きな恩恵を得る予測だ。

スマートフォンに恩恵波及も
 
 液晶モニターのほか、STBに対する関税撤廃では、ケーブルテレビ用STBで百一電子(プライム)、兆赫電子(ジンウェル)、インターネットテレビ(IPテレビ)用STBでは合勤科技(ザイセル・コミュニケーションズ)、正文科技(ジェムテック・テクノロジー)など、デジタル複合機では虹光精密工業(AVISION)、東友科技(TIS)などにプラス効果が期待される。

 このほか液晶モニターの関税撤廃が決まれば、テレビ機能や全地球測位システム(GPS)機能の付いたスマートフォンも非課税の方向に進むとみられ、宏達国際電子(HTC)などが恩恵を受けるとみられる。ただ、HTCは「スマートフォンの多くはストリーミング方式の動画を見ることができるがEUは課税を行っておらず、今回の問題による影響は限られる」としている。
 
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