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新竹科学園区、競争力揺るがず


ニュース 電子 作成日:2007年8月31日_記事番号:T00002422

新竹科学園区、競争力揺るがず


  新竹科学工業園区(竹科)で操業するハイテク企業の2006年通年の生産額は1兆1,200億元(約3兆9,200億円)で、域内総生産(GDP)の約1割に達した。主要分野の生産額の世界ランキングは、ウエハーファウンドリーが1位、IC設計2位、大型フラットディスプレイ2位、情報通信産業3位などで、順調に発展を続ける竹科は、台湾経済の競争力低下が伝えられる中で、より力強さを増している。ニュース誌「新新聞」の最新1069号が報じた。

 

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 竹科を含め全世界には約600の科学工業団地があるが、そのほとんどが1950年代より発展を始めた米西海岸のシリコンバレーをモデルにしている。竹科はシリコンバレーの模倣が最も成功した工業団地といえ、現在は中国の各工業団地のモデルになっている。

 上海の浦東国際空港から市内に向かう途中に張江高科技園区というハイテク工業団地があり、台湾・世界先進積体電路(VIS)出身の張汝京氏が創設した世界3位のファウンドリー、中芯国際集成電路製造(SMIC)が操業している。竹科の台湾積体電路製造(TSMC)を知るある投資銀行幹部が同社を訪れた際の印象は、「まるでTSMCに来たかのようだ。外から中までまるでそっくりだ」というものだった。

 中国の経済成長に伴って多くの台湾ハイテク企業が中国に進出し、これにより中国がハイテク産業で徐々に力をつけることで、台湾の競争力低下に懸念が持たれている。しかし現状では、中国によるキャッチアップの道はまだ相当遠いようだ。

 ファウンドリーの実力は、歩留まりとウエハーの回路線幅の微細化能力に現れる。業界では一般的に歩留まり96%以下は「低い」とされるが、SMICの歩留まりはわずか80%。一方、TSMCは96%を大きく超えている。回路線幅は現在90ナノメートルが主流で、TSMCはすでに45ナノを実現している一方、SMICはまだ70ナノだ。

 TSMCが年間160億元余りを投入する研究開発(R&D)費用もSMICはその4分の1以下で、R&D技術はまるまる一世代の差があるとされる。工場の外観がそっくりで生産ライン稼働率が高くても、こうした歩留まりや技術、管理者の質、管理ソフトなど、まだまだTSMCとSMICは比較にならないのが現実だ。

 中国にはIC設計企業は200社あるが、その売上高を全部合計しても、台湾の業界世界2位である聯発科技(メディアテック)の通年売上高(700億~800億元)の10分の1にもならない。

 台湾には世界最大のパッケージング・テスティングメーカー、日月光半導体(ASE)や京元電子(KYEC)もあり、台湾半導体産業は少なくとも10年は優勢を保っていけるとみられる。「長江デルタ地帯が竹科に取って代わろうとしても、正直まだかなりの差がある」と黄得瑞竹科管理局長は自信たっぷりに語る。

集積効果が強み

 竹科の強みは、長い時間を経ての企業の集積効果だと、張忠謀TSMC董事長は一昨年末に開かれた竹科25周年の記念大会で語っている。

 80年代の竹科の進出企業の製品はデジタル時計、スキャナー、テレビゲームなどで、最初の頃はそれほど発展しなかった。竹科の成功の大きな鍵になったのは、工業技術研究院出身の曹興誠氏(聯華電子前董事長)と張忠謀氏がファウンドリー事業を興したことで、これに伴って半導体関連企業が相次いで竹科に集まり、今日の発展をもたらした。

 付近に清華大学と交通大学があり、人材供給が豊富なこと、産学協同でビジネスを進められることも大きなメリットという。「日本の筑波学園都市と北九州学術研究都市は、産業界と提携して研究をビジネス化できる仕組みがなく、結局成功していない。中国のハイテク園区は産業界と連携してはいるが、学術研究機関の支援がない」と顔宗明竹科副局長は語り、竹科の研究、生産、ビジネスが一体化した強みとの対比を指摘した。

 竹科はR&Dへの投入額、進出企業で働く従業員の1人当たりの生産力など、すべて右肩上がりだ。進出企業の生産額は今後も伸び続け、11年には1兆4,000億元を超える見通しだ。

重要知財の獲得が鍵

 楽観的な観測が多い中、懸念もないわけではない。米ビジネスウイーク誌は、「中国は世界の製造センターの地位を確立している。台湾は内湖科学園区がオペレーションセンターをテーマにしているため、今後、シリコンバレーと上海を結ぶ要の役割を果たすチャンスがある」と報じ、竹科の相対的な地位低下の恐れを示唆した。

 また、UMCのある管理職者によると、竹科のハイテク企業の生産額は年々上昇してはいるが、中国企業の台頭で利益率は低下しているという。

 「これからは知的財産権の争いの時代で、R&Dに引き続き重点を置いて、最も重要な技術の知的財産権を獲得していくことが重要だ」と黄局長は勝ち残りのための方針を強調する。すでにR&Dの比重が高い企業を選別して進出を認めるよう、ハードルを高めに引き上げているという。