中部科学工業園区(中科)の第3期后里園区七星基地(台中県后里郷、通称七星基地)と第4期二林園区(彰化県二林鎮)の開発が環境問題によって阻まれている問題で、液晶パネル大手、友達光電(AUO)の七星基地での第8.5世代工場の建設が中断し、長期化する恐れも出てきた。大手液晶パネルメーカーの新世代工場投資が阻止される今回の事態に、台湾パネル業界には韓国にさらに差を広げられるとの懸念が出ている。4日付自由時報などが報じた。
高等行政法院の裁定に関して質問を受け呉敦義行政院長は渋い表情を見せた。政府の進める海外企業の投資誘致計画への悪影響も懸念される(3日=中央社)
台湾高等行政法院は3日、中科3期の開発をめぐって、「行政訴訟の判決確定前の中科開発準備処による開発許可の執行停止」、および地元住民が求めていた「環境影響評価が通過するまでの開発停止」の仮処分を認定した2件の裁定を発表した。
高等行政法院は開発許可の執行停止の理由について、今年1月に七星基地の環境影響評価に対する無効判決が確定した後も、中科管理局が環境影響評価の審査申請をやり直さず、進出企業に対し工場の建設中止などを求めなかったことを挙げている。そして、開発停止に伴い、AUOの8.5世代工場の建設中断、既に進出済みの旭能光電(サナー・ソーラー)の第1期工場も操業を停止すべきとの見解を示した。
これに対し行政院国家科学委員会(国科会)の李羅権主任委員は3日、開発許可の執行停止については最高行政法院に取り消しを求める行政訴訟を起こすとともに、環境影響評価審査の申請資料の早期提出と、専門家会議と環境評価大会での早期通過を目指すことで、早ければ10月にはAUOによる工場建設再開が可能との見方を示した。
ただ、これについて住民側の弁護士、詹順貴氏は「環境影響評価が通過しても住民が提出した仮処分が解かれるだけで、開発許可の執行停止解除は判決確定が条件だ」と指摘した。環境評価も迅速に通過できるとは限らない上、行政訴訟の終了には一定の時間がかかるとみられるため、政府の思惑とは裏腹に一定程度長期化する可能性がある。
中科七星基地ではAUOが投資額3,008億台湾元(約8,100億円)で8.5世代工場2基の建設を計画しており、1基目はほぼ完成、この第3四半期より設備搬入を開始し年内に量産を開始する予定だった。
中国投資への影響は回避
AUOは二林園区での11世代パネル工場、および太陽電池工場の計4,000億元規模の投資を確約することが、中国江蘇省昆山市での第7.5世代パネル工場投資の認可条件になるとの観測があった。7月30日、地元住民による行政訴訟で高等行政法院が同園区の開発停止を命じて投資計画が暗礁に乗り上げたため、中国への前工程投資の実現が遅延する可能性が指摘されていたが、施顔祥経済部長は3日、「工業園区の開発が阻まれることで企業に悪影響が及ぶのは不公平だ。経済部はAUOの中国投資に対し合理的対応を行う」と述べ、この問題とは切り離して判断する考えを示した。
中科管理局は3日、AUOに対し二林園区での投資計画変更に関する追加書類を提出するよう求めており、経済部はAUOが中科管理局の了解を得次第、中国投資の審査を行い、早ければ今月末にも認可を下すとの観測もある。
韓国との差が拡大
今回の事態に市場調査会社、ディスプレイサーチの謝勤益・大中華区総経理は、「AUOの2番目の8.5世代工場の、4万5,000枚の生産ラインが稼働しなければ、当然台湾パネルメーカーの国際競争力に影響する。台湾は現時点で新世代工場の投資で韓国に1年の後れをとっているが、差はさらに拡大する」と懸念を示した。証券会社からは「韓国パネルメーカーは内心ほくそ笑んでいるはずだ」との発言も聞かれた。
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