台湾とシンガポールは5日午前、双方が経済連携協定に相当する「経済合作協議」締結に向けて取り組むことを共同発表した。台湾と主要貿易国の間で自由貿易協定(FTA)に当たる協定が結ばれれば初のケースとなり、台湾の国際的地位の向上に貢献する。中台間の「海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)」調印が効果を表した形だ。シンガポールとの締結が実現すれば、他の東南アジア諸国への波及効果も期待できる。5日付経済日報などが報じた。
馬英九総統は、外交部など事務方の努力を評価するコメントを行った。シンガポールとの協定締結は、ECFAが発効する来年1月以降になる見通しだ(4日=中央社)
台湾の駐シンガポール代表処とシンガポールの駐台北代表処は5日、世界貿易機関(WTO)加盟時の名義、「台湾、澎湖、金門、馬祖個別関税領域(略称、中華台北)」とシンガポールの間の、経済連携協定の締結に向けた取り組みを進めることを共同で宣言した。台湾経済部とシンガポール通商産業省(MTI)が責任部門として個別・共同での研究に当たる。
林聖忠・経済部次長は、シンガポールはたばこや酒などのぜいたく品以外の大部分の物品がゼロ関税のため、関税引き下げによるメリットはそれほど大きくないが、金融や運輸などサービス業の市場開放が台湾企業とって最もプラスとなるとの分析を示した。シンガポールは台湾に対し、石油化学や機械、電子などの製品のゼロ関税化を望んでいるという。ただ、台湾の石化製品の関税は2%ほどのため、ゼロまで引き下げたとしても台湾企業への影響はそれほど大きくないとの見方も示した。
シンガポールは台湾にとって6番目の貿易相手国で、貿易黒字が続いている。09年の貿易額は134億2,300万米ドルで、台湾が38億400万米ドルの黒字だった。
関係者は、シンガポールは東南アジア諸国連合(ASEAN)の一員で、インドとの包括的経済連携協定(CECA)が2005年に発効していることから、シンガポールとの経済連携協定締結は台湾企業のASEANやインド市場への進出にメリットをもたらし、外資系企業の台湾投資も呼び込めると期待感を示した。
中国の圧力、陸委会「心配ない」
中国政府はこれまで何度も台湾と外国のFTA締結に反対を表明しており、反応が注目される。ただ、頼幸媛・行政院大陸委員会(陸委会)主任委員は4日、中国からの圧力に関するメディアの質問に対し、「安心していい。トラブルは起きない。そのうち発表がある」と答えた。この発言からは、この問題で既に中国側の理解が得られていることがうかがえる。
主権矮小化に懸念、民進党批判
一方、野党民進党の蔡其昌・広報担当は、馬英九政権が『一つの中国』の原則を受け入れ、北京の同意の下でシンガポールと経済連携協定を進めるのならば、台湾の主権が矮小(わいしょう)化され、中華民国が消滅するに等しいと批判した。