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作成日:2010年8月9日_記事番号:T00024500
「88水災」から1年、政治利用される被災地

きのう8月8日で、昨年南部を襲った台風8号(アジア名・モーラコット)による大規模水害からちょうど1年が過ぎた。発生日から「88水災」と呼ばれているこの災害は、死者・不明者が700人に達する大規模なものだったことは記憶に新しい。
村全体が大規模な土石流に埋まって壊滅し、死者が456人に達した最大の被災地、高雄県甲仙郷小林村は、被災後1年を機に政治の舞台としても注目を浴びてしまった。今年11月下旬に高雄県との合併後初の高雄市長選挙が控えているからだ。
高雄市長選の民進党公認候補である陳菊・現高雄市長は8日午前、小林村の跡地で行われた被害者供養の法要に参加。涙を浮かべながら、「村民の希望通り村が再建されることを望む」とのコメントを寄せた。法要に参加していた僧侶が、「(高雄市長選の)投票は陳菊に」と呼び掛ける場面もみられ、まさに政治臭ふんぷんといった感じだった。
一方、民進党内の予備選で敗れ、離党して市長選に出馬することを決めた楊秋興高雄県長は、陳菊市長との鉢合わせを避けるかのように前日7日に小林村を訪問。小林村の再建に対しては、もろ手を挙げて賛成の陳菊市長とは対照的に、「さらなるアセスメントが必要」と慎重な考えを示した。
なお、小林村では、水害から365日を経た今もまだ村民の心の傷は癒えていない。今年1月には孫3人が犠牲となった70歳の男性が自殺未遂。5月には29歳の男性が、出稼ぎ先の台北で首吊り自殺した。統計によると村民の1~3割がいまだトラウマを抱え、メンタルケアを必要としているという。