中部科学工業園区(中科)第3期后里園区七星基地(台中県后里郷)に開発停止の仮処分が下された問題で、行政院国家科学委員会(国科会)は10日、仮処分の対象は中科の公共工事であって進出企業は含まれず、友達光電(AUO)による第8.5世代液晶パネル工場の建設は中断する必要はないとの見解を表明した。AUOは歓迎の意を示した一方、法曹界からは裁判所の判断をねじ曲げて解釈したとの批判も出ている。11日付工商時報などが報じた。
記者会見を行う陳正宏・国科会副主任委員(右)と楊文科・中科管理局長(左)。国科会の判断は台湾の投資先としての信頼度低下や、国家賠償訴訟を防ぐ意図があるとみられる(10日=中央社)
陳正宏・国科会副主任委員とともに記者会見を行った楊文科・中科管理局長は10日、9日夜に受け取った行政院環境保護署(環保署)の公文書によって、行政訴訟で瑕疵(かし)があると判断された環境影響評価(環境アセスメント)が改めて審査を通過するまで、七星基地と第4期二林園区(彰化県二林鎮)の開発の即日停止を求められたと説明。これに従い、七星基地の公共工事を請け負う企業に工事の停止を通知し、企業の進出申請の受け付けを一時的に中断すると表明した。
その上で、行政訴訟法によると今回の台湾高等行政法院による仮処分の当事者は環保署、国科会、中科管理局であり、当事者以外の第三者には及ばないとの解釈の下、七星基地に進出したAUOおよび既に操業中の太陽電池メーカー、旭能光電(サナー・ソーラー)に対して、建設や操業を停止する必要はないと伝えたことを明らかにした。
「120社に良い知らせ」=AUO
中科管理局の判断に対し、李焜耀AUO董事長は、「当社とサプライチェーンの約120社にとって良い知らせだ」と語った。同社は七星基地に3,000億台湾元(約8,060億円)を投じて8.5世代工場2基を建設する予定で、1基は既にほぼ完成し、第3四半期から設備を搬入して年内の量産開始を見込んでいた。また、8月中旬から公共工事が始まる予定だった二林園区では、4,000億元を投じ、第11世代工場2棟、太陽電池工場2棟の建設を計画していた。
「法治揺るがす恐れ」、法曹界が懸念
一方で、中科管理局の判断に対し法曹界からは疑問の声が上がっている。
台北律師公会(弁護士会)環境法委員会の林三加・主任委員は、中科管理局は工業団地の主管機関であり、工事を停止すべき範囲には七星基地内のあらゆる計画、進行中および使用中の行為が含まれると指摘。以前審査された環境評価説明書にはAUO、旭能光電による工場設立が明記されており、審査の際にAUOの工場排水問題についても討議されたのに、仮処分の解釈で企業を切り離して考えるのは不合理だと強く批判した。
さらに、行政機関が法の抜け道を突くのなら、法治主義の根本原則を揺るがす恐れがあると述べ、今後違憲判断の訴訟に発展する可能性も示唆した。
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