電子機器受託メーカー、和碩聯合科技(ペガトロン)は25日、中国のノートパソコン用など金属部品メーカー、日騰電脳配件(上海)および日貴精密模具(上海)の買収を董事会で決定した。子会社を通じて2億2,000万米ドルを投じ、両社の株式100%を取得する。垂直統合の狙いは、タブレットPC「iPad」などアップル製品受注を、鴻海科技集団(フォックスコン)から奪取することとみられる。26日付工商時報が報じた。
両社の買収について林秋炭ペガトロン財務長(CFO)は、「従来の投資はプラスチック部品に重点を置いていたため、金属部品を補完する効果がある。部品の垂直統合にとって重要な一里塚となる」と意義を語った。
日騰電脳配件は、台湾出身の洪再進氏が2006年に上海の松江工業区に設立した企業で、主にノートPC、タブレットPC、電子ブックリーダー、デスクトップPC用などの金属部品を生産。早くからノートPC用金属筐体(きょうたい)にも参入し、アルミダイカストおよびプレス筐体を中心に生産を行う華東地区3大手の1社で、台湾の可成科技(キャッチャー・テクノロジー)と肩を並べる。ヒューレット・パッカード(HP)、デル、聯想集団(レノボ)、アップルのノートPC向けに製品を供給しており、iPadの筐体も生産しているとされる。
サプライチェーン食い込みに全力
証券会社によると、アップルは最近発売した製品がいずれも爆発的なヒットとなっているため、同社は鴻海に続く第2の協力メーカーを求めているとされる。ペガトロンは、華碩電脳(ASUS)からの経営分離(スピンオフ)後、直ちにアップルからスマートフォン「iPhone」の生産を受託して鴻海の独占状況を打破、さらに音楽プレーヤー「iPod」も受託、また最近では、次世代セットトップボックス(STB)「iTV」も受注したとの観測が出ており、アップル・サプライチェーンへの食い込みに全力を挙げているとみられる。
サプライチェーンの高度な垂直統合を進めるペガトロンを、証券業界では「小鴻海」と称し、今回の買収は、ペガトロンが鴻海との「正面対決」を決意したものと分析している。
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