鴻海科技集団(フォックスコン)の郭台銘董事長は4日、ウォールストリートジャーナルの取材を受け、現在中国・四川省成都市に35億米ドルを投じて総合生産拠点の設置を進めていることを明らかにした。同地ではアップルのタブレット型パソコンiPadなどモバイル製品、および周辺機器を生産する工場8基を設置予定で、第1工場が10月に量産を開始する見通しだ。8日付蘋果日報などが報じた。
郭董事長によると、現在、中国内陸部に大規模な複合型生産拠点を2カ所計画しており、その1カ所が成都となる。成都市政府とは7月に投資契約を締結済みだ。建設計画のスピードについて郭董事長は、「サンクトペテルブルク工場は着工から2年が過ぎた今も未完成だが、成都はそれより速い」と話した。
また、成都に生産拠点を設置するに当たり、郭董事長は現地政府に対し、宿舎、病院、娯楽施設、治安対策など労働者が快適に過ごせる都市づくりに70億米ドルを投じるよう要求したという。
内陸部の従業員比率を5割以上に
現在、鴻海の中国における従業員は92万人で、そのうち深圳工場が50%を占めるが、今年に入り成都のほか、武漢(湖北省)、鄭州(河南省)など、人件費が沿海部の3分の2ほどの内陸部中堅都市で生産拠点設置を進めている。中国全体の従業員に占める内陸部従業員の割合を、現在の20%から2年以内に50%、5年後には67%まで拡大させたい考えだ。
同グループでは内陸部への生産拠点移転を機に、工場エリア内での宿舎など社会サービス的機能の提供をやめて地方政府に任せ、生産や研究開発(R&D)など企業本来の業務に集中する構えだ。郭董事長は「成都工場を中国での工場エリア運営・管理におけるモデルとしたい」と語った。
「あと20年は中国が中心」
「中国は今後、『世界の工場』の座をその他の地域に譲ることになる」との見方も出ているが、郭董事長はこれを一笑に付し、「あと20年は中国が世界における生産の中心地であり続ける」と断言する。
鴻海グループは現在、世界12カ国・地域に工場を構えているが、インドは労働争議が中国より激しい、ブラジルは人件費が高い上に産業環境が整っていない、ベトナムは悪くないが国土が狭すぎるなどと欠点を挙げ、「中国はインフラ、労働コストの面で群を抜いており、これに代わる拠点はない」と強調した。
このため鴻海グループは今後も中国での生産拡充を継続する構えで、最終的には中国全体の従業員数を現在の63%増となる150万人まで増やす計画だ。なお、中国において鴻海は、既に国営石油会社、通信キャリアに次いで3番目に雇用規模の大きい企業グループとなっている。
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