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作成日:2010年9月13日_記事番号:T00025232
娘のために自転車盗む、背景に極貧生活

嘉義県で今月8日、盗難自転車が発見された。被害者は街中で偶然、盗まれた自分の愛車を発見し、即座に警察に通報。自転車に乗っていた少女(15)が、窃盗犯として逮捕された。
ところが、少女は自転車が自分のものだと主張。警察が調べた結果、犯人は彼女の父親、黄容疑者(49)で、路上に停められた自転車を盗み、「中古を買った」と言って娘に与えていたのだった。なぜ、そんなウソを?
警察の調べによると、黄一家は夫婦と子ども(一男一女)の4人暮らし。黄容疑者は事故で左目を失明して以来、酒浸りの生活で、近年はてんかんの発作にも見舞われた。このため妻がクズ拾いをして、一家の家計を支える日々だ。
一家の住まいは墓地近くにある2坪ほどの狭いコンテナハウスと、三方しか壁のないバラック小屋で、水も電気もない極貧生活。子どもたちは街灯の明かりで勉強していた。
黄容疑者の娘はバス通学をしているが、自宅からバス停まで約5キロあり、7月に自転車を盗まれて以来、毎朝1時間かけて歩いていた。黄容疑者は娘を不びんに思ったが、何せ先立つものがない。それで思い余って娘のために盗みを働いた、という訳だ。
厳しい生活環境にも負けず子どもたちは健気にがんばっており、娘は学校から帰ると、母親が拾って来たリサイクル品の仕分けや、家事に忙しい毎日。しかも学校の成績は優秀で、今年高得点で国立高級職業学校に合格した。
黄容疑者には今年7月から障害者手当と子ども手当計1万台湾元が支給されるようになったため、一家の暮らし向きはやや好転した。とはいうものの依然、中古自転車も買えないほど生活は苦しく、取り調べの警察官らはいたく同情し、みんなで3,000元をカンパし、娘のために新品の自転車を贈った。
さらにこの悲しい父娘愛がメディアで報道されるや、台湾中から警察に500件以上の電話が殺到、寄付金や支援物資が続々と届いた。これに対し娘は「ウチよりひどい家もある。そうした人たちのことも考えてあげて」と答えたというから、どこまで「できた娘」なのだろう。