米アップルは5日、一連の携帯機器シリーズの機能、価格、デザインを変更し、その中でスマートフォンのiPhone(8GB)の定価を599米ドルから399米ドルへ、33%の大幅値下げを実施すると発表した。同じタッチ式パネルの「HTC Touch」(通称・阿福機)で有力な競合とみられている宏達国際電子(HTC)は、値下げ圧力を正面から受けることになった。
宏達はHTC TouchのCDMA仕様モデル「HTC Vogue」を、米国市場で第4四半期に通信大手のスプリント・ネクステルを通じて発売する。「Touch」の諸機能をそのまま搭載した上で、通信速度を第3世代(3G)規格に対応させたのが特徴だ。
アップルの値下げを受けて、花旗環球証券のアナリストである楊応超氏は、「HTC Touchは少なくとも1~2割の値下げを迫られる。現在単体で1万4,000台湾元(約4万9,000円)だが、1万元近くまでの値下げが予想され、宏達の今年下半期と来年の業績に悪影響を与えるだろう」という見方を示した。
また7日付工商時報は、「アップルiPhoneの値下げは、比較的ポケットの浅い米国の消費者にとって大いに魅力だ。宏達とスプリント・ネクステルにとり、価格と販売戦略が成否を占う鍵となるだろう」と報じ、「値下げしなければ優位は得られない」と指摘した。また、Vogueは、宏達が米国で発売する初めての自社ブランド製品であるため、同製品がうまくいくかどうかは、消費者のHTCブランドへの印象を決定づけ、その後の米国市場でのブランド戦略を左右するとした。
これについて、王景弘同社創意長は6日開かれた同社の創立10周年記念式典で、「顧客層が違う。iPhoneユーザーはTouchを使わず、電子メールの送受信をしたいというユーザーはiPhoneを買わないだろう。Vogueの定価に影響するかは、スプリント・ネクステルが判断する問題だ」という見解を示、アナリストらの観測を否定した。
アップルはまた、iPhoneから電話機能を抜いた「iPod Touch」を発表し、くしくも「Touch」の名称が重なったが、宏達は、米国で販売するのは「Vogue」であるため、消費者の混乱は起きないと見ている。
なお、周英明宏達董事長は6日、今後はローエンド機種にも注力し、中国やインドを含む新興市場で低価格機種「Jean」を発売するなど、ブランド製品ラインのいっそうの拡大を図る方針を示した。
台湾メーカーにメリット
工商時報は、iPhoneの値下げの台湾関連業界への影響について、「スマートフォン市場の拡大が期待でき、恩恵を受ける」という携帯電話メーカーの見方を紹介した。
高級製品の大衆化進行で価格が低下する際の供給チェーンの対応力は、台湾エレクトロニクス業界が得意とするところで、IC設計の聯発科技(メディアテック)や携帯ODM(相手先ブランドで設計から製造までを担当)の華宝通訊(コンパル・コミュニケーションズ)、鴻海精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)、関連部品の大立光電(ラーガン)、可成科技(キャッチャー・テクノロジー)、鴻準精密工業(フォックスコン・テクノロジー)、群創光電(イノルックス・ディスプレイ)などのメーカーの受注増が期待できるという。