ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

台風11号、南部石化産業に打撃


ニュース 石油・化学 作成日:2010年9月20日_記事番号:T00025410

台風11号、南部石化産業に打撃

 
 19日に台湾を横断した台風11号(アジア名・ファナピ)に伴う大雨により、高雄県仁大工業区で台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス)など10社以上が操業ストップを余儀なくされ、これを受けて台湾中油も当面の需要低下懸念から川上の第5ナフサ分解プラント(高雄市楠梓区、通称五軽)の稼働を中断した。20日付経済日報によると、石化サプライチェーンの混乱による被害額は約20億台湾元(約54億円)と見込まれている。なお、中油は稼働停止が1週間以上に及んだ場合、石化製品の供給不足によりスポット価格の上昇を招くと懸念している。
 
T000254101

台南県仁徳郷の保安工業区では、腰まで水に浸かりながら工場の浸水被害の確認に向かう従業員の姿が見られた(20日=中央社)  
 
 仁大工業区の仁武工業区(高雄県仁武郷)では、台塑が塩化ビニル(VC)、ポリ塩化ビニル(PVC)など、南亜塑膠工業(ナンヤ・プラスチックス)がプラスチック加工工場の運転を停止した。仁大工業区の大社石化工業区(高雄県大社郷)では、台橡(TSRC)、中国人造繊維(CMFC)などが生産をストップした。なお、中国石油化学工業開発(CPDC、中石化)は、モーターなど設備の設置位置を高くしていたため、唯一難を逃れ、通常通り操業できるという。

 中油は、エチレン年産50万トンの第5ナフサの稼動を停止したほか、年産23万トンの第3ナフサ(高雄県林園郷、三軽)、年産38万トンの第4ナフサ(高雄県林園郷、四軽)の設備稼働率も4割に引き下げる。業界関係者は、ポリエチレン(PE)、エチレングリコール(EG)、スチレンモノマー(SM)などのスポット相場の急騰を予想している。
 
T000254102


昨年の台風8号上回る被害も
 
 工業区の主管は、台風11号による南部石化産業の被害額は、昨年8月の台風8号(アジア名・モーラコット)による南部製造業への直接被害額18億元を上回る恐れがあると指摘した。

 杜紫軍・経済部工業局長は19日夜、工業区内で浸水による工場棟や製造設備への直接的な被害は出ていないと指摘した上で、水が引けば、きょう20日中にも電力供給を回復して操業を再開できるはずで、石化産業への影響は深刻なものにはならないとの見方を示した。

 大高雄地区(高雄県市周辺エリア)で19日に浸水で稼働を停止した工場は100社近くに上った。石化産業のほか、高雄県岡山鎮に集中する金属加工メーカーなどの被害が大きく、復旧には一定の程度の時間がかかるとみられる。

南部一帯が浸水
 
 なお、今回の台風11号では南部一帯が大量の雨に見舞われ、台南県から屏東県にかけての広い範囲で浸水被害が広がり、20日付蘋果日報は高雄市の被害を「過去50年で最悪」と伝えた。

 中央気象局によると、18日午前零時~20日午前11時の降水量は屏東県瑪家郷1,126ミリメートル、高雄県岡山鎮945ミリメートル、高雄市左営区で596ミリメートルで、20日昼現在も、多くの地点で水が引いていない。このため、水害被災地では国軍の兵士4,400人も出動して、復旧活動に当たっている。

高鉄、通常運転に
 
 中央災害応変中心(中央災害対策センター)の19日午後10時30分発表によると、台風11号による死者、行方不明者はなく、けが人は76人。通行止めとなった道路は49本でうち45本は未通のまま、橋梁(きょうりょう)は10カ所が閉鎖された。空の便は、国際便213便が欠航、台湾域内線は26便が遅延、54便が運航を取り消された。

 このほか、台湾高速鉄路(高鉄)は全線運行を停止していたが20日午後6時以降順次、通常通りに復旧した。台湾鉄路(台鉄)も20日、西部幹線の台南~高雄間、および南迴線以外で運行を再開した。
 
【表】