27日付経済日報によると、太陽電池最大手、茂迪科技(モーテック・インダストリーズ)が、中台での太陽電池、台湾での太陽電池用シリコンの大幅な生産能力増強を計画している。投資額は約100億台湾元(約270億円)と見込まれており、事実とすれば、台湾積体電路製造(TSMC)が昨年末に同社の筆頭株主になって以降、最大の投資案件となる。同社の太陽電池生産能力は来年、中台合計で2ギガワット(GW)を超え、シリコン生産能力も800メガワット(MW)を突破すると予測されている。
太陽電池業界では最近、昱晶能源科技(ジンテック・エナジー)が、「各社の大幅な増産で来年供給過剰に陥るのは確実で、市況は11月下旬以降下向く」との見通しを示すなど悲観的な見方も聞かれる。しかし、モーテックの今回の投資計画は、同社が先行きを好感しており、競争力のさらなる向上に積極的であることを示すと同時に、TSMCの同業界での野心を示すものと業界ではみている。なお、TSMCは今月16日、中部科学工業園区(中科)台中園区で同社初のCIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン)薄膜太陽電池工場を着工している。
モーテックの8月売上高は221億9,400万元で台湾最大手となっているが、今回の投資計画が実行されれば、同社の生産能力は新日光能源(ネオソーラーパワー)、昱晶能源(ジンテック・エナジー)の合計に相当するまでに拡充されることになる。
新工場設置、南科に申請済み
モーテックの左元淮董事長は、同社の生産能力について「今年はもともと中台で1GWまでの拡充を目指していたが、予想以上のスピードで増強が進み、実際には目標を15%上回る1.15GWを達成できそうだ」と語った。
また、生産拡大計画に関する観測については「主に川上のシリコン生産をターゲットとしており、垂直統合によるメリット拡大を目指したものとなる」と説明した。そして、太陽電池用シリコンは現在深刻な不足状態のため価格が一貫して上昇を続けているとして、「自社調達率を高められれば、大幅なコスト低減が可能になる」と指摘した。
ただ、100億元とされる投資額について左董事長は「来年の設備投資計画はまだ決まっておらず、金額も未定」と認めなかった。
モーテックは南部科学工業園区(南科)管理局に対し、既に太陽電池用シリコン工場設置の申請を行っている。完成すれば新工場は同社「第6工場」となり、台湾で最も多くの生産拠点を持つ太陽電池メーカーとなる。
関連IC設計の統合も
太陽電池メーカーの垂直統合は通常、川上のシリコン材料、川下のモジュール、発電システムを主とするが、モーテックはさらに省エネルギー関連のIC設計にまで手を広げている。同社は2007年、台湾初の太陽光発電システムに応用されるICの設計業者、広閎科技(イナジー・テク)を出資比率42.97%で設立した。
IC設計分野への展開では、半導体分野で豊富な経験を持つTSMCの協力を得ることで、垂直統合全体の価値が向上する。これにより、同業他社に追随を許さない地位を築ける見通しだ。
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