経済部投資審議委員会(投審会)は29日、ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が申請していた、中国・上海市松江区の8インチウエハー工場の0.13マイクロメートル製造プロセスへの昇級に対し認可を下した。中芯国際集成電路製造(SMIC)、上海宏力半導体(GSMC)、和艦科技など、地場ファウンドリーと対等に競争できる態勢が整うこととなり、中国市場で第3世代(3G)携帯電話やデジタルテレビ向けチップ、液晶ドライバICなどの受注を積極的に狙う。30日付工商時報が報じた。
投審会は認可を下した理由について、米国政府が既にインテルに中国での90ナノメートル技術導入を認めていること、およびTSMCが台湾で2世代以上先を行く40ナノプロセスによる量産を行っているため、先端技術の移転には当たらないことを挙げた。
TSMCの上海松江工場は2003年末の設立以来、台湾側の投資規制によって、0.18マイクロプロセス以前の技術しか導入できなかった。しかし、中国ではこの7年間で0.25マイクロから0.13マイクロまたは90ナノまで技術が進んでおり、TSMCはSMIC、GSMC、和艦科技など地場ファウンドリーに太刀打ちできず、今年4月まで赤字が続いていた。
認可を受けてTSMCは、「直ちにプロセス移行作業に着手する」と表明した。中国は「三網合一」(通信・放送・インターネットのネットワーク統合)が推進され、また、世界最大のデジタル放送対応テレビおよび携帯電話組み立て拠点となっており、こうした商機の獲得を目指す。
なお、TSMCは先ごろ、松江工場に2億2,500万米ドルの増資を行うことを決定しており、同工場の生産能力は現在の月産4万5,000枚(8インチウエハー投入枚数)から年内に5万枚、来年には6万枚に拡大する見通しだ。
「遅すぎた開放」
今回の認可について工商時報は「遅すぎた開放」と評した。中国のSMICがこの10年間で世界第4位のファウンドリーに成長したのはライバルが存在しなかったためで、台湾政府が06〜07年に0.13マイクロプロセスを開放していれば、世界最大の市場に成長した中国でTSMCが多くの受注を獲得していたはずだと批判した。
その上で「インテルや韓国ハイニックス半導体は中国に12インチ工場を設置しているが、米韓両国は最先端技術が本国にとどまりさえすれば、それほど厳しい規制は行っていない」と指摘。「それでこそ企業は中国大陸で適切に業務を展開でき、最終的に本国に利益が回流する」とし、海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)締結で中台間の信頼関係が深まる中、政府はさらなる規制緩和を進めるべきと提言した。
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