行政院衛生署疾病管制局(CDC)は4日、「NDM−1」と呼ばれる酵素を作り出す遺伝子を持ち、抗生物質がほとんど効かない新型耐性菌が台湾で初めて検出されたと発表した。感染者はインドで手術を受けて帰台した男性で、現在は自宅療養中。男性に症状は出ておらず、CDCは免疫力が正常であれば日常生活で新型耐性菌に感染する恐れはないとして、住民に対し冷静さを保つよう呼び掛けた。5日付経済日報などが報じた。
施文儀CDC副局長は、インドやパキスタンなどへの渡航時には特に注意し、現地では必要に迫られていない限り、できるだけ手術をしないよう求めた(4日=中央社)
CDCの発表によると、感染した男性は大手ケーブルテレビ局、TVBSのカメラマンで、先月19日に番組の撮影のために訪れたインドで腹部に銃撃を受ける事件に遭い、現地の病院で手術した。27日に台湾に戻り、台北栄民総医院で治療を受けた後、今月4日に退院した。
施文儀CDC副局長は、新型耐性菌は傷口や手術を通じて感染するものの、飛沫(ひまつ)感染はしないため、握手や抱擁をしても問題はないと強調。この男性についても退院後、用便の際に便器の蓋をしっかり閉めて洗浄水を流せば、同僚など周囲の人々に感染させることはないと説明した。ただ、今後も追跡調査を続ける考えで、男性に当面は週1回の定期検査を求めている。
この新型耐性菌は発原地とみられるインド、パキスタンのほか、欧州や日本、香港など世界10カ国以上で発症が確認されている。台湾ではCDCが9月9日、この新型耐性菌の感染症を第4類法定伝染病に指定した。
台湾東洋、抗生物質の供給に自信
この新型耐性菌に有効とされる抗生物質には、米ファイザー開発の新薬「チゲサイクリン(tigecycline)」のほか、台湾東洋薬品工業(TTYバイオファーム)のジェネリック医薬品(後発医薬品)「克痢黴素(coli tin)」がある。
曽天賜・台湾東洋副董事長は、「大流行となっても、台湾全土の需要を満たすことができる」と表明した。一方、永豊餘造紙が出資するバイオ医薬品メーカー、太景生技も、同社が開発した抗生物質「奈諾沙星」はさまざまな細菌に効果が出ており、「NDM−1」の菌株が入手できれば、数日内に「NDM−1」に対し効果があるかを確認できるとしている。