聯発科技(メディアテック)は10日、米半導体大手アナログ・デバイセズ(ADI)のワイヤレスチップ事業部門を3億5,000万米ドルで買収したと発表した。これにより大手携帯電話メーカーからの製品受注増や、中国での3G(第3世代)携帯向け製品の競争力強化が期待できる。同社は携帯電話向けチップでは現在業界3位だが、年内に2位の米フリースケール・セミコンダクタを抜く見通しで、首位のテキサス・インスツルメンツ(TI)に挑戦する。11日付経済日報が報じた。
聯発が今回買収したのはADI傘下の「オテロ」「ソフトフォン」の携帯向け製品ラインの有形・無形資産と事業チームで、昨年ADIにもたらした売上高は2億3,000万米ドルに上る。買収により聯発のワイヤレスチップ部門は、400人近い人材を得、GSM、GPRS、EDGE、WCDMA、TD-SCDMAなど各種方式の携帯電話用チップ、ベースバンドICおよびRFIC技術を強化できる。台湾IC設計業界としては、数年前の威盛電子(VIAテクノロジーズ)による米ナショナル・セミコンダクタのプロセッサ部門買収に並ぶ最大規模の買収案件となる。
聯発によると、ADIの携帯関連IC部門の昨年の業績は損益トントンだった。買収したワイヤレス関連の権利と技術は、来年から聯発の現有製品と調整を図っていく。謝清江同社総経理は、「当社の顧客は中国の携帯電話メーカーがメインだが、ADIはサムスン電子やLGなど大手一流メーカーに強い。また、TD-SCDMAやベースバンドおよびRFICなど一部の技術は当社を上回っており、それぞれ強みがある」と語り、大手携帯キャリアが聯発からのチップ採用を増やすことへの期待を示した。また、「双方をいかに統合していくが大きな課題だ」と率直な認識を示した。
ADIは中国・大唐移動通信設備と共同で、中国独自の3GシステムであるTD-SCDMA向けチップを開発しており、聯発は今回の買収を通じてこの技術も取得することで、市場展開を速める効果が期待できる。
聯発はまた、ADIが携帯チップの生産を台湾積体電路製造(TSMC)に委託していることについて、委託先を変更する考えはないとした。
8月売上高、過去最高に
聯発が同日発表した8月の売上高は過去最高の96億8,200万台湾元(約340億円)で、昨年同月比成長率は約40%に達した。第3四半期の売上高の昨年同期比成長率の見通しも従来の15~20%から、40~45%に大幅に引き上げた。