陳菊氏(民進党、現職)、黄昭順氏(国民党、立法委員)、楊秋興氏(無所属、高雄県長)の三つどもえの争いとなっている高雄市長選挙で17日、楊氏の選挙対策本部の開所式が開かれ、親民党の宋楚瑜主席が応援に駆け付けた。18日付中国時報が報じた。
楊秋興氏(中)をはさんで支持者の歓呼の中を歩く宋楚瑜主席(左)と林淵源氏(右)。集会には4万人以上の支持者が詰め掛け、大きな盛り上がりを見せた(17日=中央社)
宋主席は李登輝政権時代に与党国民党の秘書長、台湾省長(1998年に廃止)を務め、人気を誇った。李元総統との仲たがいから2000年の総統選挙に国民党を離党して出馬したものの落選。直後に親民党を結成して主席に就任した。04年の総統選では「国親連合」を組み、国民党の連戦主席(当時)が総統候補、宋主席が副総統候補のペアで立候補したが、再選を目指した陳水扁候補(民進党)に僅差で敗れた。思想的には国民党に近いものの、今回は国民党公認候補の黄氏がいる中で、同党との対立姿勢を鮮明にした形だ。なお、宋主席は馬英九総統との長年にわたる不和が知られている。
高雄市長選は現職、陳氏のリードが伝えられており黄氏は最も劣勢だ。このため、宋主席の楊氏応援によって、国民党支持層の間で、黄氏を見捨てて楊氏支持にくら替えする「棄黄保楊」現象が起きる可能性が指摘されている。楊氏は民進党を離党して出馬した今回、「得票の8割は国民党支持層から。民進党支持層からは1割にすぎない」(鍾紹和立法委員、国民党)とみられており、宋主席の応援には心強いものがある。ただ、既に政界から半引退状態の宋主席に、有権者を動かす力がどの程度残っているのかいぶかる向きもある。宋主席よりは、同日ともに楊氏の応援に立った、高雄の地方派閥「白派」の長老格で元高雄県長の林淵源氏の集票能力がより期待できるとの見方もある。
宋主席の動きに対し、馬総統はあくまで「棄黄保楊」に反対し、黄氏支持を貫く姿勢だ。世論調査では楊氏と黄氏の支持率を合計すれば陳氏を上回るが、馬総統が国民党支持層の分裂を警戒して黄氏の集票に励めば励むほど陳氏が有利になるとみられる。