米半導体大手、インテルが2年前に宣言した高速無線通信規格WiMAX(ワイマックス)の台湾投資がいまだ進まないことに台湾側が不満を強める中、28日来台して経済部と新たにクラウドコンピューティング関連の提携覚書(MOU)を締結したポール・オッテリーニ最高経営責任者(CEO)は、WiMAX投資の早期実現を改めて求めた呼び掛けに対し、何ら具体的な反応を示さなかった。7年前に調印したWiMAX最新技術移転に関するMOUも立ち消えとなっており、インテルがWiMAX分野で消極姿勢に転じたことを印象付けている。29日付工商時報などが報じた。
クラウドに関する提携MOUを交わしたオッテリーニ・インテルのCEO(左)と中華電信の呂学錦董事長(右)。中華電信は今年7月に4GでLTEを選択することを明言した(28日=中央社)
インテルは2008年4月、台湾WiMAX関連の調達に5年間で5億米ドルを投じるMOUを経済部と締結した。それから2年半が過ぎたが、全く進展がないばかりか、今年6月にはWiMAX推進室「WiMAX Program Office(WPO)」の解散を社内で通知したことが明らかとなり、WiMAX撤退説まで浮上した。
黄重球経済部次長は28日、インテルとのクラウド提携MOU調印式のあいさつで、インテルがこれまでに調印した3大MOUの実現を望むと語った。この3大MOUは08年調印のWiMAX投資、台湾企業と合弁によるシステム統合(SI)会社設立、および03年に調印した台湾創新研究開発中心(台湾イノベーションセンター)を指す。
これに先立ち、オッテリーニCEOの表敬訪問を受けた馬英九総統も、クアルコムやエリクソンは台湾の第4世代移動通信(4G)サプライチェーン構築で協議に入っていると指摘し、業界首位の立場にあるインテルも、WiMAX推進を具体化するよう呼び掛けた。王振堂・台北市電脳商業同業公会(TCA)理事長(エイサー董事長)も、WiMAX関連リソースを早期に台湾に移植するよう求めたとみられる。
4G、LTEも好感
しかしオッテリーニCEOはクラウド提携MOU調印式で、4GシステムはWiMAXにせよLTE(ロング・ターム・エボリューション)にせよ、いずれも成長が見込め、台湾でのWiMAXの発展を期待していると語るのみで、WiMAX分野に引き続き積極的に取り組むかどうかについて見解を表明しなかった。
一方、クラウドMOUに関しては、台湾で3億8,900万台湾元(約10億円)を投じると宣言した。年内にも行政院国家科学委員会(国科会)および大学1校と共同実験室を立ち上げる。投資額は共同で3〜5年以内に7億5,000万台湾元(約20億円)。また、プロセッサ、チップセット、データセンターで必要なソフトウエアなどの台湾企業へのライセンス授権、技術要員25人の投入、人材育成などで1億3,900万元を見込む。
中華電信とネットTVで提携
インテルは同日、中華電信ともクラウド、IPTV(インターネット・テレビ)に関する提携MOUを共同発表した。また、インテルが世界75社と共同設立したクラウド関連推進組織「オープン・データセンター・アライアンス(ODCA)」に、中華電信が加盟した。今後、オープンスタンダートや省エネ技術などで幅広く協力し合う。
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