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作成日:2010年11月1日_記事番号:T00026234
報奨アップで諜報部員を鼓舞、中台関係改善で薄れる存在感

国家安全局(国安局)はこのほど、諜報活動の功績に対する報奨金額を明確にした「国家情報工作奨励弁法」を新たに制定した。これにより、スパイ工作や国家の安全維持に功績のあった組織やチームには最高1,000万台湾元(約2,600万円)、個人には最高500万元の報奨金が与えられることになった。
国安局がこのような報奨金授与を決定したのは、中台関係の改善を進める馬英九政権の下で諜報組織の存在意義が問われるようになる中、活動の士気を高めることが目的のようだ。また、台湾人スパイが中国で多数逮捕されたり、情報の質が落ちている状況を受け、従来の派遣システムや手法を見直す必要が出ている現状もあるとみられる。
中台での諜報活動に30年間従事してきた「伝説のスパイ」、元国防部軍事情報局(軍情局)副処長の龐大為氏によると、中国と敵対していた蒋介石・蒋経国時代、軍情局は情報戦の重要な柱とみられていた。しかし李登輝、陳水扁時代には「政治闘争の道具」と変化し、中国寄りの現政権下では中国に対する諜報戦は「冬眠期」に入りつつあるという。
龐氏はその著書『情報札記』で、台湾側に大量の重要機密を提供した中国人民解放軍の劉連昆少将(1933~99)は、その功績により台湾当局から6年間に計2,500万元もの報奨金を得ていたことを明らかにしている。96年の台湾海峡ミサイル危機の際、中国が台湾に向けて打ったミサイルは空砲だったという情報も彼が提供したものだった。
劉氏は後にスパイであることが発覚し処刑されたが、「人民解放軍の歴史上、最高位のスパイ」と称され、当時、劉氏に関わるプロジェクトを担当した各組織には、計500万元の報奨金が支給された。これは一度に支給された報奨金としては、過去最高額だったという。
龐氏によると、中台関係改善に伴い、最近は多数の中国人スパイが観光やビジネスの名目で台湾に入ってきているという。しかし、軍情局の人員は以前の5,000人から2,000人に、予算も40億元から10数億元に削減されており、台湾に侵入する中国人を細かく割り出すことは不可能な状態で、中国人諜報員にとっては活動し放題の「スパイ天国」となっている。
国安局は将来、「国家情報工作法」の規定を修正し、国家安全局、国防部軍事情報局など現在の計9つの情報機関に加え、内政部移民署も情報機関として見なす方針だ。諜報活動の功績は、これらの諜報組織だけでなく、一般人や外国人にも適応されるという。