31日午前7時30分、台北松山〜東京羽田線就航第1便となる長栄航空(エバー航空)BR192便が245人の乗客を乗せて松山空港を離陸した。松山空港は台北の主要商業エリア、東区まで都市交通システム(MRT)で約6分という、世界でもトップクラスのアクセスの良さを誇り、利便性が大幅に向上した。日台の航空会社4社により毎日8便が運航される同路線を利用すると、従来の桃園〜成田路線に比べ往復で2時間以上を短縮でき、今後ビジネス客の利用は松山〜羽田線にシフトしそうだ。
就航を祝う放水の中を滑走路に向けて進むエバー航空192便(31日=YSN)
台北で朝食、東京で昼食も可能に
松山〜羽田線を運航するのは、中華航空(チャイナエアライン)、エバー航空、日本航空、全日空の4社で、中華航空と日本航空、エバー航空と全日空がコードシェアを行う。
松山空港から市街地へのアクセスは、MRTを使った場合、東区商圏へは松山機場駅から忠孝復興までわずか6分、台北101などのある信義計画区へは板南線・市政府駅まで約11分、台北駅へは同じく板南線で約12分だ。
また羽田空港も、品川まで京急電鉄で13分、山手線乗り換えで渋谷へ25分、新宿へ32分で、成田空港からに比べ、特に東京西部、神奈川方面の利用者にとって大きなメリットとなった。今後は台北で朝食を取り、昼食は東京で、といったスケジュールも可能になる。
料金は成田と同水準
航空券料金は、全日空が往復1万1,000台湾元(約2万9,000円)の優待価格を打ち出しているほかは、1万3,000〜1万5,000元となっている。桃園〜成田線も同水準のため、市内から空港までの交通費を考慮すると松山〜羽田線は料金面でも魅力だ。
松山〜羽田就航に大手旅行社、雄獅旅遊(ライオントラベル)の林承曄副総経理は「団体ツアー客よりも、ビジネス客と個人客が最も恩恵を受ける」と話した。交通部観光局は、日台間の旅行者数は来年約30%成長し、延べ300万人を突破すると予測している。
安倍元首相も来台
松山〜羽田便の就航は、1979年の桃園空港開港で台湾の国際線が松山空港から移転して以来31年ぶりだ。第1便の出発前、呉敦義行政院長、郝龍斌台北市長、日本側からは交流協会台北事務所の今井正代表などが出席して祝賀式典が開催された。さっそく11月6日開幕の台北国際花卉(かき)博覧会(花博)に日本人観光客の呼び込みが期待できる台北市は、郝市長が「東アジアにおける台北の重要性が増す」と期待感を語り、自ら第1便に搭乗し「東京日帰りツアー」を楽しんだ。
就航祝賀式典に出席した郝龍斌台北市長(左3)、呉敦義行政院長(左4)、今井正・交流協会代表(左5)(31日=YSN)
午前9時48分には羽田発の第1便で、東京都議会議員団や、交通部観光局が招待した「松山」、「羽田」の名字を持つ12人などを載せた中華航空CI223便が松山空港に到着。入境ロビーでレセプションが開かれた。その後、12時15分には安倍晋三元首相を乗せた全日空の第1便が到着。安倍元首相は台湾メディアに対し、「在任中に推進した松山〜台北線が実現し、非常にうれしい」と語った。
なお、松山〜羽田線就航は、馬英九総統の公約である、台北市と東京(羽田)、上海(虹橋)、ソウル(金浦)の主要商業都市を結ぶ「東アジア黄金航空圏」の一環だが、残る金浦線について交通部は「既に韓国から反応があり、早ければ来年中に就航させたい」と明言した。
ターミナル改築は来年9月完了
松山空港は国際空港化に伴う施設の改築が進行中で、現在、第2ターミナルを封鎖して工事を行っており、第1ターミナルに台湾域内線と国際線が同居している。羽田線の就航に合わせて入境審査カウンターを増設し、空港側は「到着から25分以内に全員が荷物を受け取れる」と強調しているが、国際線の旅客が利用する5番、6番搭乗ゲートは一部通路が重なっており、出発便と到着便の間隔が近い場合は混乱も懸念されている。
これについて毛治国交通部長は「旅客に若干不便をかけるかもしれないが、来年3月に台湾域内線が第2ターミナルに移設されるまでの過渡期的な現象」と説明。来年9月には第1ターミナルの2階を国際線出境用に、3階を入境用に分けることで改築作業が完成すると強調した。
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